不思議なおっさん
自分が小学生の頃、近所で割と有名なおっさんがいた。
いつもぶつぶつ何か呟きながら町を徘徊していた人だった。
両親も含めて、奇妙な人だから近寄らない方が良いと誰もが言っていたので、話し掛けたことはなかった。
※
当時サッカークラブに通っていたのだが、ある日、思い切り首を打ってしまった。
鎖骨が折れてしまい急遽病院へ。その時、校門からあのおっさんが俺のことを見ていた。
※
翌日、ギブスで首をガチガチに固定された状態で学校へ。
休み時間に廊下の窓から外を見ると、あのおっさんがいるではないか。
放課後、友人と一緒に家に帰る途中でおっさんは待機していた。
おもむろに俺に近寄ると、首のところにスッと手を当ててくれた。
その間、およそ数分間。おっさんの額は汗でぐっしょり。
さすがに怖くて、おっさんが手を離すと、俺はすぐに家に向かって走った。
家に着いて両親にそのことを話そうとした時、変化に気付いた。
首の違和感が全く無いではないか。
※
1週間後、経過確認で病院に行ったら医者が驚嘆していた。骨折の跡がまるで無かったらしい。
俺はその話を両親にしたけど、まるで信じない(治ったこと自体は不思議がっていたが)。
俺自身も半信半疑だったが、一応おっさんにお礼を言おうと思ったら行方をくらましていた。
今から思えば、子供には評判が良かったおっさんであった。
元気であって欲しいと思う今日この頃。