半分の家

公開日: 不思議な体験

廃屋の窓(フリー写真)

じいちゃんから聞いた話。

従軍中、幾つか怪談を聞いたそうだ。その中の一つの話で、真偽は不明。

大陸でのこと。

ある部隊が野営することになった。

宿営地から少し行った所に、古く小さな家が周辺の集落から外れてぽつんと建っている。廃屋らしい。

使えるようなら接収するかということで、数人が調べに行った。

家の中には什器や家具が一部残っていた。

だが、何故かその全てが真っ二つに割れ、半分しかなかったそうだ。

テーブル、椅子、水瓶、釜戸、戸棚、何もかもが半分。

おかしなことに、それらも家同様かなり古いもののように見えるのに、幾つかの品物の切断面は妙に真新しかったらしい。

調べに来た者たちがその異様な雰囲気に飲まれていると、一人が家の裏手から鶏の死骸を見つけて来た。

白骨化した、それも半分だった。

戻った彼らはそのことを報告し、結局その家は使わないことになった。

夜、警戒のため何人かが宿営地の周辺を巡回した。

翌朝になって、最後に巡回に出た一人が戻っていないことが判った。

他の者の中に、夜中にあの家に明かりが点いていたと話す者が居て、すぐに捜索を行うことになった。

民間ゲリラかもしれないからだ。

時機を見て突入したが、家には誰も居らず、また火を使った形跡もなかった。

行方不明になった一人は、昨日鶏が見つかった家の裏手で死んでいた。

争った様子はなく、着衣や装備にも乱れはなかったが、部隊に戻されることなくその場で埋葬された。

遺体はひどく小さかったという。

その後間もなく、部隊は転進命令を受けてそこを離れた。

後になって、その辺りではあの家が『半分の家』と呼ばれて忌まれ、昼間でも近付く者は居ないという話を聞いたそうだ。

関連記事

黒ピグモン

深夜にひとりで残業をしていた時の話。 数年前の12月の週末、翌週までに納品しなければいけない仕事をこなす為に、ひとり事務所に残って残業していた。 気付けば深夜0時近く。連日…

男の戦い(宮大工12)

十年程前、親方の親友でやはり宮大工の棟梁であるKさんが病気で倒れてしまった時の事。 親方とおかみさんは急遽お見舞いに行き、俺は親方の代理で現場を取り仕切った。 三日程して親…

夜の繁華街

赤い服の男

かつて私が所属していたサークルの公演が終わったある夜、私たちは近くの居酒屋で打ち上げをしていました。 公演の開始時間が遅かったため、打ち上げが終わる頃には時計の針は既に午前一時…

神社の思い出

小学生の時、家の近くの神社でよく遊んでた。 ある日、いつも通り友達みんなで走り回ったりして遊んでいると、知らない子が混ざってた。 混ざってたというか、子供の頃は誰彼かまわず…

女の誘い(宮大工8)

お伊勢参りの翌年、梅が開き始める頃。 山の奥にあるお稲荷様の神主さんから、お社の修繕依頼が入った。 そう、弟弟子の一人が憑かれたあのお稲荷様の社だ。 親方に呼ばれ、 …

公園(フリー背景素材)

七人の神様

結婚してすぐ夫の転勤で北海道へ引っ越した。 知り合いも居らず、気持ちが沈んだ状態でいたある日のこと。 何となく友達の言っていた話を思い出し、それを反芻しながら道を歩いてい…

桜(フリー写真)

五回目の人生

俺には高校時代からの親友Aがいる。 高校時代の当時、Aの自宅には、Aの従兄弟で大学生であるBさんが居候していた。 Aの父親が、Aの大学受験の勉強を見てもらう事を条件に、地方…

ガラス越しの水族館

夢の水族館で

俺は、じいちゃんのことが大好きだった。 初孫だったこともあって、じいちゃんはとても可愛がってくれた。 おねだりが得意じゃなかった俺にも、いろいろな物を買ってくれたし、虫採…

ふたりの母

ふたりの母 — 扉の向こうと現実のあわいで

これは、私がまだ小学校に上がる前の、夏の終わりに体験した不思議な話です。 ※ その日、私は母方の祖父母が住む田舎の家で、昼寝をしていました。 何度も訪れていたはずの…

キャンプ(フリー写真)

もし、旅かな?

学生だった頃、週末に一人キャンプに興じていた時期があった。 金曜日から日曜日にかけてどこかの野山に寝泊りする、というだけの面白味も何もないキャンプ。 友達のいない俺は、寂…