奇跡的な救い

道路

昔、私は精神的に追い詰められていた時期があり、よく大型バイクをかっ飛ばしては危険を顧みずに走り回っていました。

ある日、私は渋滞している幹線道路をすり抜けて走っていました。道の左端を進んでいたところ、突然対向車線から右折してくる車に接触し、強烈な衝撃を受けました。

事故の瞬間、時間がスローモーションのように感じられました。バイクに乗ったまま、私は直進する電柱に向かって飛んでいくのが見えました。その時、白いものが横から飛びかかってきて、私はそれに抱きつかれるようにして道路脇の歩道へと投げ出されました。

地面に転がり落ちた後、白い服を着た女の子が私から離れ、
「あぶなかったね」と微笑みながら言ったのです。そして、彼女はすぐに消えてしまいました。

その後、事故の衝撃で気が遠くなりかけた私の耳元で、「あまり無茶をしちゃダメよ」という声が聞こえましたが、振り返っても誰もいませんでした。

救急車が到着し、病院へと運ばれましたが、私は奇跡的に足の軽い打撲以外に大きな怪我はありませんでした。事故の衝撃にもかかわらず、私のバイクは電信柱に激突し、完全に破壊されていました。

後日、警察の事情聴取で「よくバイクから飛び降りることができたな」と言われましたが、私は実際には飛び降りた覚えはありません。

この事故の3年前に交通事故で亡くなった私の婚約者は、彼女が死ぬ間際に「愛している、ずっと見守っている」と言ったことを思い出しました。彼女が事故の時に私を救ったのかもしれません。

ジャケットを見たとき、背中部分が擦れて傷だらけになっている中で、細い腕と小さな手の形で無傷の部分が残っていたのです。

彼女を失ってから自暴自棄になっていましたが、この事故を境に、もう一度しっかりと生きていくべきだと強く感じるようになりました。私が見たのが幻覚だったとしても、それが私を救ったのです。

関連記事

伊勢神宮参り(宮大工7)

オオカミ様のお社を修理し終わった後の年末。 親方の発案で親方とおかみさん、そして弟子達で年末旅行に行く事になった。 行き先は熱田神宮と伊勢神宮。 かなり遠い所だが、三…

河童淵(フリー写真)

河童

幼稚園の頃、祖父母の住む田舎に行った時、不思議な生物に会いました。 のんびりとした田舎町で、周りに住んでいる人全員が家族のように仲が良い場所なので、両親も心配せずに私を一人で遊び…

雪景色(フリー素材)

もどり雪

一月の終わり、山守りのハルさんは、山の見廻りを終えて山を下っていた。 左側の谷から、強烈な北風に舞い上がった粉雪が吹き付けてくる。 ちょっとした吹雪のような、『もどり雪』だ…

夢(フリー素材)

神隠しの夢

もう10年以上前、俺が中学校の頃の話です。 当時はしょっちゅう同じ夢を見ていまして。 左右が田んぼの長い田舎道を、一人で歩いているんですよ。 すると向こうの方から和服…

雪に覆われた山(フリー写真)

雪を踏む足音

初雪の山は登ってはいけない。 そういう話を仲間内でよく聞いていたが、単に滑りやすくなるからだろうと軽く捉えていた知り合いは、命の危険に晒された。 彼は登山歴3年くらいの経験…

病室(フリー素材)

絵日記

この前、夜遅くの深夜にハッっと起きてしまいました。 なんでいきなり起きちゃったんだろう…と思っていると、部屋の隅に何かの気配を感じました。 眼を凝らして見てみると、それは…

横断歩道(フリー写真)

守護

週末、飲み会で泥酔して帰った時の事。 家の前には深夜でも交通量が多く、事故の多い国道があるのだけど…。 普段は危ないから絶対に斜め横断なんてしないのに、酔った勢いでつい魔…

犬(フリー画像)

愛犬との最期のお別れ

私が飼っていた犬(やむこ・あだ名)の話です。 中学生の頃、父の知り合いの家で生まれたのを見に行き、とても可愛かったので即連れて帰りました。 学校から帰ると毎日散歩に連れ出し…

時計(フリー素材)

巻き戻った時間

子供というのは錯乱すると、訳の解らない行動をしてしまうものだよな。 子供の頃、俺に起こった不可思議なお話。 ※ 当時は5月の節句で、俺のために親が飾ってくれた兜と小刀が居間に…

温泉街(フリー写真)

歪んだ旅館

怖いと言うよりちょっと不思議な話です。 会社のK子さんという同僚から聞いたお話で、彼女の実体験です。 K子さんは先月の末、妹さんと二人で箱根の温泉旅館に行ったそうです。 …