集団の闇
公開日: 死ぬ程洒落にならない怖い話
身元が特定されるかもしれないから詳しくは書けないけど、某長寿番組に『開かずの扉を開ける』という企画で出たことがある。
当時住んでいたのは割と年代物の寮で、俺達の代で廃寮になることが決まっていた。
寮生の私物を入れる大きなロッカーがある部屋があり、ロッカーの後ろに押入れがあることに、ある日一人が気付いたんだ。
ロッカーを動かしてみようか、という話になったのだけど、何しろ大きくて重いし、折角だから有名な某番組に投稿しようぜ、という流れになった。
※
それが採用され、5月にタレントがやって来た。
最後の寮生である俺と、あと二人が立ち会って、ロッカーを退け、押入れを開けると…。
そこには大量の朝○日報。
そして木製バット。
○鮮日報は殆どが綺麗に折り畳まれていたけど、血の染みのようなドス黒いものが大量に付着していて、ぐちゃぐちゃにされたものも結構大量にあった。
それらを取り出して更に捜索すると、押入れの壁は落書きだらけ。
大半は日本語だったけど、ハングルやよく解らない文字もあった。
お札も貼ってあった。
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結局、テレビではボロっちい寮で暮らす生活を面白おかしく取り上げて、開かずの扉のところは、取り敢えず無難そうな顕微鏡と謎の皿を映しただけで終わった。
取り出した物は全部、カメラマンさんやタレントさんが戻し、ロッカーも元通りにしてくれた。
そういう作業はADさんの仕事だと思っていたから、タレントさん自らやることに少しびっくりした。
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元々とても古い寮で、トイレの傍には学生闘争時代のポスター(『1979年×月×日、○○が死んだ!彼の遺志を継げ!』というような物騒な内容)が今だに貼ってある。
それでも、やはり血の染みが付いた朝○日報と、凶器っぽいバットには血の気が引いた…。
その番組が放送された後、その寮の出身者と思われる占い師を自称する女性が訪ねて来て、現役寮生が席を外した間に、過去~現在までの寮生名簿を持ち去るという事件もあった。
一応返却はされたのだけど、コピーされているかもしれないよね…。
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俺達が在寮している時には、もう思想的な縛りなど何も無かった。
でも同じ大学や近所の大学では、今だに学生闘争を引き摺って、何やら活動してる寮もあったようだ(一応、西暦2000年だったのに)。
実家が貧乏で仕送りが期待出来ない、でも一人暮らししたい、という軽い気持ちで寮に入ったけど、集団というものには闇が潜みやすいのだろうなと思う。