お化け煙突

IMG_1606

数年前の事ですが、私の職場にKさんという人が転勤してきました。

Kさんは、私と同じ社員寮に住むことになったのですが、しばらくして、私と雑談している時に

「寮の窓から見える高い煙突は何だ?」

と訊いてきました。その時のKさんは心なしか青ざめていたようでした。

私には心当たりはなかったのですが、同じ社員寮でも、私とKさんの部屋は離れていましたし、Kさんの部屋の窓から見える風景と私の部屋から見える風景が同じとは限りません。

それに私もその土地では余所者でしたし、詳しい地理を知っていたわけでもありませんので、銭湯か何かの煙突でしょうと適当に話を合わせ、その話はそれきりになっていたのです。

ところが、それから一月ほど経って、Kさんが寮から程近い住宅街で死んでいるのが発見されました。

死体の状態は無惨なものだったそうです。

奇妙なことに、Kさんはかなり高い所から墜落して死んだらしいのですが、Kさんの遺体が発見された付近は住宅ばかりで墜死するほどの高所は見当たりません。

とはいえ、自動車事故でもなく他殺の疑いも全くなく、結局事故死として処理されたようです。

さて、私はKさんの本葬に参列するため、Kさんの郷里を訪れました。

Kさんの郷里というのは、九州のある海辺の町だったのですが、遺族の方の車に乗せてもらって、Kさんの実家に向かう途中、海沿いの道路に差し掛かった時、現れた風景に目を奪われました。

そこには古びた工場があり、巨大な煙突が立っていたのです。

遺族の方によると、それはお化け煙突と言われる煙突で、かなり昔から町のシンボルとしてそこに建っているそうです。

私は何となく、Kさんが寮の窓から見た煙突というのが、この煙突ではないかと思えてなりませんでした。

ところで、私は最近とても不安な日々を送っています。

私の寮の部屋の窓から、高い煙突が見えるようになったのです。

心なしかKさんの郷里で見た、あのお化け煙突に似ているような気がしました。

煙突はかなり遠くに見えますので、以前からあったのに気づかなかった可能性もないとは言えません。

また、最近になってできた建造物なのかもしれませんが、私にはその煙突が最近になって忽然と現れたようにしか思えないのです。

職場の同僚に訊いてみても曖昧な答えしか返ってきません。

私には、あの煙突の近くまで行って確かめてみる勇気はありません。

皆さん、お願いです。今すぐあなたの家の窓から、外を覗いてみてほしいのです。

それまで見たこともなかった煙突が見えるということがあったら教えてほしいのです。

一体そんなことがあり得るのでしょうか?

関連記事

電脳に棲む神

大学時代の友人の話。 そいつは結構なオタクで、今でも某SNSにガチオタな話題をバンバン日記に書くようなSE。 この前、たまたま新宿で会って「ちょっと茶でも飲もうや」というこ…

友子が二人

一人で繁華街を歩いていると、ガラス張りのカフェ店内の窓際席に一人でいる友子を見つけた。 友子の携帯に電話して驚かせようとしたが、友子は電話に気付かない。 じっと座り、目を左…

田舎の風景(フリー写真)

山のタブー

子供の頃、近所のおじいさんに聞いた話です。 そのおじいさんは若い頃、一度事業に失敗し実家の田舎に帰ったそうです。 実家には持ち山があり、色々謂れがありました。 しかし…

着物(フリー素材)

以前、井戸の底のミニハウスと、学生時代の女友達Bに棲みついているモノの話を書いた者です。 AがB宅を訪問した時のことをもう一つ話してくれたので投稿します。 ※ 以下はこれまで…

トンじい

私の出身地は、古くから部落差別の残る地域でした。 当時、私は小学生でした。部落差別があると言っても、それは大人の世界での話で、幼い私には差別など解りませんでした。 子供同士…

田舎の景色(フリー素材)

てっぐ様

これは俺の親戚のおばちゃんから聞いた話だ。 おばちゃんは多少霊感がある人らしく、近所では「伝説のおばちゃん」と言われていて、自分でもそう言っている。 俺はそのおばちゃんに昔…

エレベーターのボタン(フリー写真)

走って来る人影

その日は仕事帰りに買い物のため、自宅近くのショッピングモールに寄りました。 時刻は20時過ぎだったと思います。 そのショッピングモールは、デパートと言うには小さ過ぎる地方の…

鏡の中の話

鏡の中の話だ。 小さい頃、俺はいつも鏡に向かって話し掛けていたという。 もちろん、俺自身にはハッキリとした記憶は無いが、親戚が集まるような場面になると、決まって誰かがその話…

シルエット(フリー写真)

シルエット

数日前に居間でテレビを視ていたら、玄関のチャイムを激しく連打されました。 けたたましい呼び出し音に、俺は少しキレ気味に玄関へ向かいました。 我が家の玄関の扉はすりガラスに…

民家

呪われた家系

私の店には、しばしばクレーマーとして知られるお客様が来店します。彼の家族にまつわる話は非常に不気味でした。 彼の家族の歴史を聞いて驚愕しました。学生時代に父親が突然発狂し、母親…