犬神様の蔵
公開日: 死ぬ程洒落にならない怖い話 | 田舎にまつわる怖い話
学生の時、友人と民宿に泊まった。
そこは古い民家のような所で、母屋の隣に大きな蔵があった。
民宿のおばあちゃんが言うには、その蔵には神様が祀ってあるから入るなとのこと。
そんなことを言われると、入ってみたくなるのが人情というもので…。
例に漏れず友人と連れ立って、こっそり蔵の中を覗いてみた。
覗いた僕らは唖然とした。
蔵の内壁には伊勢神宮にあるような神代文字が、赤い塗料でびっしりと書き込まれており、そこかしこにお札が貼ってあった。
やばいと感じた僕らはそそくさと部屋に戻り、その後はご飯を食べて酒を飲んでいた。
※
そうして夜も更けた頃、蔵の方から突然、
「ばんばん!!ばんばん!!」
という音が聞こえてきた。
蔵の扉を叩いているような音だった。
不審に思った僕らは、泊まっていた母屋の二階から蔵の方を見てみた。
蔵の扉は内側から強い力で叩かれていて、叩かれる度に凄い音を立てていた。
僕たちはその光景をただ呆然と眺めていた。
すると突然、蔵の扉が
「ばん!!」
と開き、中から人影が飛び出して来て、あっという間に外に走り去ってしまった。
目の錯覚かと思った。見間違いかと思った。
蔵から走り出て来たのは、犬の頭部を持った人間だったからだ。
※
その後、祟りなどには全く遭っていない。
ただ、その地方に犬神という神様が祀られていることだけは後で聞いた。