異世界の輸界「やみ駅←きさらぎ駅→かたす駅」

異世界の駅

「きさらぎ駅」という駅をご存知でしょうか?

過去に 2chで大きな話題になった怖い話の一つです。

はすみさんという方が実在しないその駅に迷い込んだまま行方不明になったという内容で、インターネットで検索すればすぐに見つけられると思います。

その話を思い出したのは、約五年前のことでした。

年末の頃、私は福岡から久留米へ電車で向かっていました。

道中、逆に本に専念していたため、周りの充客がいつの間にか全員眠っていたことに気づきました。

なぜかその充客たちの眠り方が不自然に感じられ、怖さよりも不思議な想いに駅られました。

見やると、電車は古い鉄橋を渡っていました。

その後に見えたのは階段上に掘られた陸橋。

そこを超えると駅に到着しました。

ほとんどその路線を使わない私は普段の駅の様子を記憶していません。

しかし、その駅は、明らかに見認めのない普通ではない景色でした。

ホームが二つあり、その奥には古い日本建築風の駅舎。

ホームの柱には「きさらぎ」とひらがなで書かれたプレート。

雨が降り、ホームの一部しか小帯があらず、傘を持った人たちが居ました。

しかし上陸してくる人はだれ一人いません。

すこし遠くに「きさらぎ」と書かれた大きな立て筆の目録。

そこには一つ前の駅「やみ」、一つ後の駅「かたす」という名前もそれぞれひらがなで書かれていました。

普通なら駅を間違えたとパニックになりそうなのに、その場にいた私はなぜか降りてみたいと思いました。

でも、久留米で出迎に来てもらう約束があったので降りる時間はありません。

稲やかに窗の外を眺めているうちに、電車は出発しました。

その後、次の駅「かたす」には続けて着かず、ずっと軽い振動と音を続けて走りつづけました。

やがて、電車は久留米に着き、周りの人ももう起きていました。

違う駅では停車しなかったような気もしましたが、記憶があやふやでよく覚えていません。

おそらく、本を読みながら深くない眠りに落ち、その名前を見たことによる記憶の作同だろうと思っていました。

しかし、最近「きさらぎ駅」の話を再びネットで見つけて、その似た怪談に驚いたのです。

はすみさんの話と違って、私の窓外には人家もあり、駅には人も居た。

とンねるも通らず、座席にも充客はいたので、その違いにまた異譜を覚えます。

でも、それでも、あの駅の名前は「きさらぎ」でした。

それだけは、間違いなく記憶しています。

その駅名には、何か秘めた意味があるのでしょうか?

この世界とあの世界をつなぐ、正体の矩形をした線路のどこかに、実際にそのような駅が存在するのかもしれません。

その駅で降りていたら、私は今、ここにはいなかったかもしれないのです。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

怖い話・異世界に行った話・都市伝説まとめ - ミステリー | note

最新情報は ミステリー公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

見覚えのある手

10年前の話だが、俺が尊敬している先輩の話をしようと思う。 当時、クライミングを始めて夢中になっていた俺に、先輩が最初に教えてくれた言葉だ。 「ペアで登頂中にひとりが転落し…

黒い物体

黒い穴

もう10年くらい前、俺がまだ学生だった頃の出来事。 当時、友人Aが中古の安い軽自動車を買ったので、よくつるむ仲間内とあちこちドライブへ行っていた。 その時に起きた不気味な出…

大学の廊下(フリー写真)

鏡に映る私

短い話で、特に面白くも怖くもないかもしれませんが、私が中学生の時に体験した事を話させてください。 私はN県の出身で、私が住んでいる街には地元では少し有名なカトリック系の女子大が…

空(フリー写真)

石屋のバイト

私は二十歳の頃、石屋でバイトをしていました。 ある日、お墓へ工事に行くと、隣の墓地に自分の母親くらいのおばさんが居ました。 なぜかその人は、私の働く姿を見守るような目で見て…

女性のシルエット(フリー素材)

この女になろうと思った

友達が経験した話です。 高校の卒業式に、友人Aは同級生で親友だった男Bに告白された(Aも男)。 Aはショックで混乱しつつも、Bを傷付けないよう丁寧にお断りしたそうだが、Bか…

もう一つの顔

学生時代の友人のM美の話をしようと思う。 その日、私はM美が一人暮らしをしているアパートへ遊びに行った。 私は絨毯に横になりながら、M美はベッドに腰掛けてのんびりくつろいで…

浅間神社の氏神様(宮大工4)

とある秋の話。 俺の住む街から数十キロ離れた山奥にあるA村の村長さんが仕事場を訪れた。 A村の氏神である浅間神社の修繕を頼みたいという。 A村は親方の本家がある村であ…

田舎の夏

夏の約束

夏が近づくと、ふと思い出すことがある。 中学生だったある夏の日、私は不思議な体験をした。 当時、世間の同世代が夏休みを謳歌する中、私はサッカー部の一員として遠征続きの毎日…

臨死体験

けっこう昔の出来事なんだけど、俺が小学生のとき臨死体験にあった。海水浴場で溺れて死にかけたことがきっかけだった。 家族で行った海水浴場で、俺がそこで泳いでいるときに突然足がつって…

絵皿

喋る絵皿

小さい頃、祖父が友人宅から鷹の絵の描かれた大きな絵皿を貰ってきた。 それは今でも和室に飾ってあって、特に怪奇現象を起こしたりはしていない。 祖父の友人は骨董商だった。 …