見知らぬ町

都市(フリー写真)

俺が高校生の時に出会った時空のおっさんの話。

その日は友達と遊んでから帰って来て、自分の部屋(一戸建ての3階)で寛いでいた。

ベットに寝転び、伸びをしながらリラックスしていたんだ。

伸びをする時に目を瞑っていたのだが、目を開けたら何かおかしい。

何だろうと思い外を見たら、全然知らない景色(全く見たことも無い住宅街)が広がっていた。

驚いて下の階に降りたら、そこに居たはずの家族が誰も居ない。

テレビを点けても何色かのバーが映っているだけで、何も放送していない。

夢なのかなと思い頬を抓っても何も変化無し。

家には親父の趣味で時計が沢山あったんだけど、全部バラバラの時間を指していて、進む速さもバラバラ。

流石に怖くなったので、外に出て状況を確認しようと思った。

外に出てもやはり知らない家、知らない通り、知らない景色…。

誰も居ない町。

でも、ここで何故かデジャヴを感じたんだよ。絶対に見たことが無い景色だと、自信を持って言えるほど記憶に無いのに。

知らない家や通りを見ながらゆっくり歩いていても、どこか懐かしい感じがする。

凄く矛盾しているけど、実際そんな感覚だった。

宇宙って不思議だよな。

仏教では、宇宙には始まりも終わりも無く無限大らしいぜ。

だからビッグバンは単なる赤ちゃん誕生という感じ。宇宙が宇宙を生むらしいぜ。

人間もそうだよな。

自然発生は有り得ないのさ。

全てに因果、つまり原因があって結果がある。

当然、宇宙に終わりはあるが、単なる一個の生命が終わるだけで、また発生するのさ。永遠に。

人間の中に宇宙があり、宇宙の中に人間がある。

30分ほど歩いていると大きな駅に着いたんだけど、やはり人っ子一人居ない。

家を出る時に沈みかけだった太陽も動いていない。

この時点で、家に帰って泣きたいほど寂しかった。

駅に入ったら電車が動いていた。もちろん乗務員は見当たらない。

もう完全にお手上げ状態だったので電車に乗った。

暫く窓から町を見ていたのだけど、さっきと同じデジャヴのような感覚がする。

絶対に記憶には無い町なんだけどな。

埒が明かないので電車を降りたら、ロングコートのおっさんがこちらに背を向けて立っていた。

おっさんを見た瞬間から耳鳴りがし始め、おっさんが振り返って何かを言葉にした瞬間、意識が途絶えた。

次の瞬間、驚いて飛び起きた。

夢か…と思い体を起こしたんだけど、またあの見知らぬ景色が見えたので、まだ夢の中か…と思った。

書くのが面倒だから省くけど、同じような状況をあと3回繰り返した。

誰も居ない見知らぬ町を歩いたり、電車に乗ったりする。

どこかでおっさんに遭遇して意識が途切れる。

それで最後の4度目の後に目を覚ましたら、家から7キロくらい離れた道のど真ん中に立っていた。

時間を確認したら、家に帰ってから1時間半くらい経っていた。

以上が俺の体験談です。

補足すると季節は夏で、俺は東京在住です。

文章で町と書いたけど、実際は都市かもしれない。

向こう側の世界では、自転車を使って移動もした。

地方の政令指定都市などではなく、東京や大阪のような混じり気のない都会でした。

おっさんとは常に背を向けた状態で遭遇し、その顔を見る瞬間に意識が途絶えたので、顔はよく覚えていないです。

おっさん以外は誰も居らず、聞こえる音は自分の出す音と電車の音、それからおっさんと遭遇した時の耳鳴りだけでした。

こちら側に帰って来た時に立っていた道には後で何回か行きましたが、特に何も起こりませんでした。

関連記事

お屋敷(フリー写真)

お屋敷の物品回収

古い物を家主の居なくなった家から回収し、業者に売りに出す仕事をしています。 一般の人から依頼があって回収する事もあるし、解体業者からお呼びが掛かって現場へ出向く事もあります。 …

台湾

混同された記憶

私は現在、仕事の都合で台湾に住んでいます。宿代もかからず、日本からも近いため、友人が時々遊びに来ます。この話は、そんなある時の出来事です。 今年の2月初旬、高校時代からの親友で…

時空

時空トンネル

数年前、子供の頃に不思議だった出来事が繋がった話です。 5才くらいの記憶で、その頃はよく畑仕事に兄と付いて行っていたんです。 畑から数十メートル離れた場所に、大きな岩が何個…

朝顔

幼い私が消えていた小一時間の記憶

アサガオが咲いていたから、あれは夏のことだったと思います。 当時、私は5歳で、庭の砂場で一人遊びをしていました。 いつものように、小さなシャベルで山を作ったり壊したりしな…

町の風景

夢が告げるもの

私は昔から、いわゆる「予知夢」のようなものを度々見る体質です。 いわゆるデジャヴとは違い、明らかに未来の出来事を夢の中で体験する感覚。けれど、それは決して便利な能力ではありませ…

竹下通りの裏路地

今から5年前、当時付き合っていた彼女と竹下通りへ買い物に出掛けました。 祭日だったと記憶しています。どこを見ても若者だらけで、快晴の空の下、人混みを避けながら買い物を楽しんでいま…

時計(フリー素材)

巻き戻った時間

子供というのは錯乱すると、訳の解らない行動をしてしまうものだよな。 子供の頃、俺に起こった不可思議なお話。 ※ 当時は5月の節句で、俺のために親が飾ってくれた兜と小刀が居間に…

デパート(フリー素材)

異世界のデパート

小さい頃、婆ちゃんの家にあるタンスに入ると変な町に行けた。 タンスの中に吊ってある服の奥にどんどん進んで行くと、デパートの洋服売り場のような場所に出た。また商品の服の中に入ると婆…

ビルの隙間

去年の夏休みの事。 夜中にコンビニへ行き、いつも通る道を歩いていると、ビルとビルの間に1メートルくらいの隙間があるのを発見した。 俺は『こんな所に隙間あったっけ?』と思った…

民家

きょうこさん

以前付き合っていた霊感の強い女性から聞いた話です。「これまで色んな霊体験してきて、洒落にならんくらい怖い目にあったことってないの?」と尋ねたら、彼女は深刻な表情で教えてくれました。 …