過去への通話

電話機

遡ること、今から15年以上前の高校時代、母から奇妙な話を聞かされたことがある。母は言った。「昨日、お前から電話がかかってきた。『もうすぐ○○(私たちが住んでいるところ)に到着する』と言っていた。声は間違いなくお前だった」と。しかし、その時私は家にいて、寝ていたので、そんな電話をした記憶はない。ましてや、それが夜にかかってきたというのだから、なおさら不可能な話だった。

時は流れ、高校を卒業し、専門学校も出た後、2年前に専門学校の同窓会が八王子で開かれた。楽しい時間を過ごし、同窓会が終わり、帰路についた私は特急に乗車した。夜だったが、何故か強烈な眠気に襲われた。疲れがたたったのだろうと思ったが、眠りから覚めた時にはすっかり眠気が消えていた。

帰宅報告をするために、乗り換え駅に到着すると、家に電話をした。電話が繋がると、「もしもし!」と母の声が飛び込んできた。驚いたのは、その時母は病気で寝たきりのはずだった。その上、電話での母の声は元気そのものだった。混乱しながらも、自分が八王子から帰るところだと告げた。しかし、電話の向こうの母は「○○(私の名前)は寝ているけど…誰?こんな夜中にどこに出かけてるの?」と返した。困惑し、電話は突然切れた。

その後、乗り換え電車に乗ったものの、また強烈な眠気に襲われ、30分ほど眠ってしまった。目が覚めると、目的地の駅に到着していた。家に再度電話をすると、今度は兄が出た。母は相変わらず寝ているとのこと。兄に駅まで迎えに来てもらうことにした。

兄の車の中で、高校時代の不思議な体験を思い出した。まるで時間を超えたかのような出来事に、私は動揺を隠せなかった。「あれって…ついさっきの俺!?」と自問自答し、過去に時間が飛んだのではないかと考えてしまった。

関連記事

男の子のシルエット(フリー素材)

消えて行く同級生

小学校から仲の良かったAとBと自分。 高校からは学校が分かれたのだが、お互い実家は近所だったので偶に町中で会ったりしていた。 ※ しかし私が県外の専門学校へ入学し、Bが市内の…

交差点(フリー素材)

命の恩人との再会

小学5年生の時の話をします。 ある日、通学路の交差点を渡っていると、右折車が横断中の俺を目がけて突っ込んで来た。 催眠術にかかったように体が動かず、突っ込んで来る車を呆然…

ゴムまり持った女の子

私がまだ花の女子大生だった頃のお話です。 私の学科用の校舎は新設されたばかりでまだぴかぴか。最上階には視聴覚設備用の特別教室があり、その上にパイプスペース用の小部屋だけがある階が…

山道(フリー写真)

姥捨て山の老人

これは、私の兄が小学生の頃に体験した話です。 当時は私がまだ生まれる前のことでした。 春のある日、兄と祖父が近くの山で山菜採りに行きました。 彼らが目指していたのは…

糸と縫い針(フリー写真)

祖母の糸切りばさみ

20年程前の話。田舎で祖母が亡くなった時のこと。 母方の実家は地元では名士で、医者でも教師でもないのに、祖父は周りから先生と呼ばれていた。 そういう人なので、あちこちに愛人…

お葬式

数年前、深夜の0時頃に、その頃付き合ってたSから電話が掛かってきた。 切羽詰まったような声と口調で、話の内容がいまいち理解出来ない。 外にいるみたいなので、取り敢えず家まで…

失われた時間

2001年の秋。 風邪ひいて寒気がするので、大久保にある病院に行くため西武新宿線のつり革につかまってた。頭がぐわんぐわんと痛みだして、ギュッと目を閉じて眉間にしわ寄せて耐えてた。…

草むら

茶室のような小さな扉

うちの近くに、高い草が生い茂る空き地がある。日が差し込みにくく、常に薄暗いその場所は、不気味な雰囲気を漂わせている。 そんな空き地は、小中学生にとっては絶好の肝試しスポットとな…

癒しの手

不思議なおっさん

自分が小学生の頃、近所で割と有名なおっさんがいた。 いつもぶつぶつ何か呟きながら町を徘徊していた人だった。 両親も含めて、奇妙な人だから近寄らない方が良いと誰もが言っていた…

飲食店(フリー素材)

身代わり

少し昔の話をする。 私の友人が飲食店の店長をする事になった。 その店に行きたいと思いつつなかなか都合がつかず、結局その店に行けたのはオープンから一ヶ月が過ぎようとしている頃…