交差点での時間停止

交差点

10年前、僕が小学6年生の時の話です。

ある日、学校からの帰り道、人通りの多い交差点で信号待ちをしていたところ、突然、自分以外の周りの人や道路を走っている車が一斉に動きを止めました。まるで時間が止まったかのようでした。

「え?何これ?」と思った瞬間、交差点のど真ん中に、男と女の2人組が突如として現れました。彼らは本当に突然、パッと現れたのです。見た目は普通の若い男女で、ただ二人とも全身黒ずくめだったのが印象的でした。

現れた途端、彼らはこちらを見て、声を揃えて「あ。」と言いました。

何か危険な雰囲気を感じ取った僕は、逃げようと思って走り出しましたが、男に追いかけられて腕を掴まれました。その瞬間、恐怖で完全に体が動かなくなりました。

男は僕の腕を掴んだまま、女に向かって「失敗してんじゃねーか」と叱責し、「失敗だけならまだしも、姿見られたのはまずい」と言いました。女は必死に「すみません、すみません」と謝っていました。

男はしばらく「どうするか」とか「まずいよなー」と言いながら困った様子でしたが、突然僕を向いて、「このこと誰にも言うなよ?」と忠告しました。僕は怖くて、必死で「言いません!言いません!」と答えました。

横で女が「それは駄目ですって!ばれたら余計にまずいことになりますって!」と言っていましたが、男は「バレなきゃいいんだよ、そもそもお前が失敗したんだろー」と言って二人は揉め始めました。

最終的に、男が女を言い負かして、女は泣きそうな顔で黙ってしまいました。

その後、男が僕と同じ目線になり、「これやるから絶対誰にも言うなよ、頼むから。男の約束」と言い、僕の手に何かを握らせました。僕が「わかりました、絶対誰にも言いません」と約束すると、彼は手を離して、「すぐ元通りになるから、もうお家帰りな」と言いました。

女も「脅かしちゃってごめんね」と申し訳なさそうに言いました。

家に帰る道すがら、僕はポケットに入れた和紙に包まれた飴を取り出しました。それは白っぽい透明な飴で、中心には虹色のマーブル模様がありました。好奇心に負けてその飴を食べてみると、信じられないほど美味しかったのです。

その後も、もう一度その飴を食べたくて何度も交差点を訪れましたが、その不思議な男女には二度と会うことはありませんでした。

今でもその交差点を通るたびに、あの不思議な体験を思い出します。

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