せいちゃん(従姉妹シリーズ1)
公開日: 従姉妹シリーズ
五つ年上の従姉妹の話。
何だかおかしな人で、彼女と関わったことで幾つか奇妙な体験をした。
今から話すのはその中の一つ。
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俺がまだ小学生だった頃、近所にせいちゃんと呼ばれている人が住んでいた。
三十代の一人やもめで痩身の、気弱そうに笑う犬好きなおじさんだった。
偶に捨て犬を拾って来ては世話をし、家には犬が何匹もいたから、近所の子供たちがよく入り浸っていたのを覚えている。
舗装されていない砂利道が続く借家地帯、近所に住む人たちは皆んな知り合いでプライバシーなんて皆無。そんな所で俺もせいちゃんも暮らしていた。
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ある日、件の従姉妹家族が俺の家へ遊びに来た。
従姉妹は無口で話し辛い人だったので二人で居ても間が持たず、せいちゃんの家に連れて行った。
ちょうどせいちゃんは犬に餌付けをしているところで、垣根の向こう側にその様子を見た彼女は一言、
「あれはとり憑かれてる。もう手遅れね」
と言って俺の家へ戻ってしまった。
俺は訳が解らず、『また二人になるのは嫌だなあ』なんて思いながら後を追ったんだ。
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それから暫く経ったある日、家の前の砂利道にぼんやりと佇んでいるせいちゃんを見かけた。
全裸で空を見上げ、半開きの口からは一筋涎が垂れていた。
俺は見てはいけないものを見たような気がして自宅に逃げ帰った。
それがせいちゃんを見た最後だった。
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大人たちの話では、せいちゃんは犬と一緒に家に閉じ籠もったらしい。
心配した近所の人が飯を差し入れても、家からは出て来なかったそうだ。
それから間もなくせいちゃんは死んだ。
餓死だった。
発見された時、彼が飼っていた犬たちだけは丸々と太っていたという。
せいちゃんは、近所の人たちからの差し入れも全て犬たちに与えていたんだ。
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せいちゃんの死後、家を整理した大家さんの話によると、床下から異常な量の犬の骨が発見されたそうだ。
それらを殺したのがせいちゃんなのか、せいちゃんは従姉妹の言うように取り憑かれていたのか、それとも単に心を病んでいたのかは分からない。
真相は闇の中だ。
とにかくそれが、従姉妹と関わった最初の奇妙な出来事になった。