奄美大島の伝説

沖縄

この話は私の大学時代の友人から聞いたもので、彼は奄美大島出身です。ある夜、ゼミ合宿での宴の席で、私たちは怪談話に花を咲かせていました。その中で、奄美大島に伝わる「いまじょ」という怪談が話題に上がりましたが、地元出身の彼はその話を知らないと言いました。

私は彼に「いまじょ」の話をしたところ、彼は興味津々で聞いていました。この「いまじょ」とは、奄美大島の古仁屋町に実際に存在したとされる伝説の女性です。彼女は金持ちの家のヤンチュ(下女)として働いていましたが、その美しさから主人に手篭めにされ、そのまま囲われてしまいます。

しかし、主人の妻は彼女に嫉妬し、ある日彼女を納屋に呼び出して殺害します。その結果、いまじょさんは怨霊となり、その家を祟り、家族全員が死に絶えたと言われています。

その夏、私は友人と彼の故郷である奄美大島を訪れる機会がありました。彼の家族は私たちを温かく迎え入れてくれ、楽しい時を過ごしました。ある晩、酒を飲みながら彼の父親に「いまじょ」の話を再度確認しました。

彼の父親は、私が以前聞いた話とほぼ同じ内容を語りましたが、詳細はより悲惨で残酷でした。いまじょさんは、主人の妻によって長い間拷問を受け、最終的には非常に残忍な方法で命を奪われました。さらに、彼女の家族もこの怨念によって巻き込まれ、絶えてしまったと言います。

この話が進む中、彼の祖母が突然現れ、彼の父親を厳しく叱りました。地元では「いまじょ」の話をすること自体がタブー視されており、話すことで再び悲劇が起こると信じられていたからです。

翌日、私たちは彼の父親に謝りに行きましたが、その際に奄美大島の人々が「いまじょ」の怨霊を本当に恐れていることを改めて知らされました。彼らにとって、「いまじょ」はただの伝説ではなく、実際に祟る存在として認識されていたのです。

この体験は私にとって非常に印象深いものであり、地方に根ざした信仰やタブーの深さを改めて感じさせられました。

関連記事

神秘的な森

角田の森

あれは小学6年の夏休みの事でした。 友人のHとTが角田の森で遊んでいた時、Hが奥の廃屋へ行ってみようと言い出したそうです。 当時、私達は角田の森でよく遊んでいました。 …

奇声を発するおっさん

俺はあるマンションに住んでいるんだが、2ヵ月くらい前、真上の部屋に人の善さそうな初老のおっさんが引っ越してきた。 朝にゴミ出しをしていると「おはようございます」と笑顔で挨拶してく…

高過ぎる電気代

ある新婚夫婦がマイホームを購入するため不動産屋を訪ねた。 その夫婦は、少し古いが希望に合う物件を見つけることが出来た。 そこは古い和風屋敷の一軒家。値段の割には良い物件。 …

山里(フリー写真)

やっかい箪笥

小学校低学年の頃に体験した話。 子供の頃の記憶がはっきりしている自分にしてはおぼろげな記憶なので、一部夢と混ざっているのではないかと思いつつ、なるべく鮮明に憶えているところを。 …

別荘

人の塊

2年前の話を。 この話は一応口止めされている内容のため、具体的な場所などは書けません。 具体的な部分は殆ど省くかボカしているので、それでも良いという方だけお読みください。 …

自首した理由

俺の親戚に元刑務官って人がいる。 その人が言うには、刑務官の仕事って受刑者を監視する事じゃなくて、受刑者に人の温かみを教えるのが本当の仕事らしい。 そんな叔父は時間があれば…

抽象的(フリー素材)

ムシャクル様

前職が前職だったので、不思議な話を聞く機会はそれなりにあった。 老若男女問わず、「こんなことがあったんだが、何もしなくて大丈夫か」「あれは一体何だったのか」などを寺に尋ねに来る人…

みさきとおばあちゃん

朝起きて家の前でタバコをふかしていると、隣に住んでるAさんに声をかけられた。 「○○ちゃん(私の名前)、頼みたい事があるんだけど……。 ちょっと、みさき(Aさんの娘さん、小…

んーーーー

現在も住んでいる自宅での話。 今私が住んでいる場所は特にいわくも無く、昔から我が家系が住んでいる土地なので、この家に住んでいれば恐怖体験は自分には起こらないと思っていました。 …

林道(フリー写真)

姥捨て山

俺の兄貴が小学生の頃、まだ俺が生まれる前に体験した話。 兄貴が小学5年生の春頃、おじいちゃんと一緒に近くの山へ山菜採りに入った。 狙っていたのはタラという植物の芽で、幹に棘…