バイバイ

公開日: ほんのり怖い話

家(フリー写真)

4月の統一地方選挙で、某候補者のウグイス嬢をしました。

その時、私はマイク担当ではなく、手振りに専念していました。

手振りは、候補者を支持してくださる方が振っている手を漏らさず目で捉え「ありがとうございます」と手を振り返すこと。

それともう一つ、興味半分でもこちらへ視線を向けてくださった方に手を振り、どれだけ笑顔で返していただけるか、手を振り返していただけるかの行為です。

その日は生憎の雨で人通りが少なく、そんな時は失礼とは思いながら、屋内へ目をやることが多くあります。

するとあるお家の二階の窓のカーテンが開いていました。

天井がクロス張りであることも判る距離でした。

その窓の下方に、小学低学年くらいの女の子の顔が見えました。

ちょうど顎から上だけ。首は窓枠に遮られて見えません。

子供さんはにっこり笑ってくださることが多いので、彼女に向けて手を振りました。

彼女の反応はありません。

私の乗る遊説車は徐々に通り過ぎ、間もなく彼女の姿も見えなくなるであろう頃。

彼女は頭を揺らし始めました。窓から見える頭だけ。

表情はなく、ただ頭が揺れています。手でバイバイをするように、窓に平行に、かなりのスピードで。

そのまま彼女の姿は私の視界から消えました。

子供のいたずらだったのかもしれません。

でもあの無表情さ、ほんのり怖かった。

関連記事

カブト虫

夜、友人4人と車で山道走ってたら、1人が急に「虫がいた。停めて。カブト虫探す」 って言って時速30kmで走ってる車から飛び降りて、ゲラゲラ笑いながら山の中に消えていった。 実家に…

妖狐哀歌(宮大工10)

オオカミ様が代わられてから数年が経った。 俺も仕事を覚え数多くの現場をこなし、自分でも辛うじて一人前の仲間入りを果たす事が出来たと実感するようになった。 また、兄弟子たちも…

最強の姉

一年前から一人暮らしを始めて以来、不眠症が酷くなった。 数ヶ月前に姉が遊びに来て、「へー…ここ住んでるんだ。そうかそうかなるほどね」と変な言葉を残して帰って行った。 霊とか…

民宿の一室(フリー写真)

あの時の約束

長野県Y郡の旅館に泊まった時の話。 スキー場に近い割に静かなその温泉地がすっかり気に入り、僕は一ヶ月以上もそこに泊まったんです。 その時、宿の女将さんから聞いた話をします。…

優しい抽象的模様(フリー素材)

兵隊さんとの思い出

子どもの頃、いつも知らない人が私を見ていた。 その人はヘルメットを被っていて、襟足には布がひらひらしており、緑色の作業服のような格好。足には包帯が巻かれていた。 小学生にな…

踏み入るべきではない場所

私がまだ小学校低学年の幼い子供だった頃、趣味で怖い話を作っては家族や友達に聞かせていました。 「僕が考えた怖い話なんだけど、聞いてよ」と、きちんと前置きをしてからです。 特…

少女

喋れない幼馴染

少し長くなりますが、実体験を書き込みます。 俺がまだ小学生の頃、家の隣に幼馴染A子がいた。A子は喋ることができなかった。 生まれつき声帯が悪かったらしい……。更に、ここでは…

桜の木の神様

今は暑いからご無沙汰しているけど、土日になるとよく近所の公園に行く。 住宅地のど真ん中にある、鉄棒とブランコと砂場しかない小さな公園。 子供が遊んでいることは滅多にない。と…

材木(フリー写真)

合いの手

俺の親父が若い時分に、山から材木を切り出す仕事をしていた頃の話。 飯場と呼ばれる山の中の宿舎で、他の作業員と寝起きを共にする仕事だったそうだ。 その中に民謡のとても上手い…

キャンプ場

少女のお礼

この話は僕がまだ中学生だった頃、友人の家に泊まりに行った時に聞いた話。 友人と僕が怪談をしていると、友人の親父さんが入って来て、 「お前たち幽霊の存在を信じてるのかい? 俺…