バイバイ

公開日: ほんのり怖い話

家(フリー写真)

4月の統一地方選挙で、某候補者のウグイス嬢をしました。

その時、私はマイク担当ではなく、手振りに専念していました。

手振りは、候補者を支持してくださる方が振っている手を漏らさず目で捉え「ありがとうございます」と手を振り返すこと。

それともう一つ、興味半分でもこちらへ視線を向けてくださった方に手を振り、どれだけ笑顔で返していただけるか、手を振り返していただけるかの行為です。

その日は生憎の雨で人通りが少なく、そんな時は失礼とは思いながら、屋内へ目をやることが多くあります。

するとあるお家の二階の窓のカーテンが開いていました。

天井がクロス張りであることも判る距離でした。

その窓の下方に、小学低学年くらいの女の子の顔が見えました。

ちょうど顎から上だけ。首は窓枠に遮られて見えません。

子供さんはにっこり笑ってくださることが多いので、彼女に向けて手を振りました。

彼女の反応はありません。

私の乗る遊説車は徐々に通り過ぎ、間もなく彼女の姿も見えなくなるであろう頃。

彼女は頭を揺らし始めました。窓から見える頭だけ。

表情はなく、ただ頭が揺れています。手でバイバイをするように、窓に平行に、かなりのスピードで。

そのまま彼女の姿は私の視界から消えました。

子供のいたずらだったのかもしれません。

でもあの無表情さ、ほんのり怖かった。

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