正夢

公開日: 怖い話

dreams2

ある若い女性が家に帰ろうと夜道を歩いていた。

ふと背後に気配を感じた彼女が振り返ると、黒っぽい服を着た男が彼女の後ろを歩いている。

しばらく歩き続けたが男の足音は消えず、まるで彼女の後をつけているかのようだ。

まさかとは思ったものの、少し怖くなった彼女は歩みを速め、近くにあるコンビニへ駆け込んだ。

彼女はしばらくの間、雑誌を読む振りをして様子を窺がっていたが、コンビニの中に男は入ってこない。

どうやらコンビニを通り過ぎて行ったようだ。

自分の思い違いであったかとほっとした彼女は、簡単な買い物を済ませてコンビニを出た。

ところが、コンビニを出て数歩進んだ途端に、彼女の背中に強烈な激痛が走る。

振り向くと先ほどの男が彼女の背中に大きな包丁を突きたてていた。

男はコンビニを通り過ぎたのではなく、コンビニの脇の物陰に隠れて彼女が出てくるのを待ち構えていたのだ。

彼女の意識はだんだん遠のいていった…。

ここで彼女は全身に汗をびっしょりかいて目を覚ました。全ては夢だったのだ。

彼女は嫌な夢を見たなと思ったがすぐに気を取り直し、家を出るとごく普通の平和な一日を過ごした。

ところがその日の夜…家路についた彼女は背後に気配を感じ、そっと後ろを振り返った。

見ると黒っぽい服装の男が彼女の後ろを歩いている。まるで彼女の後をつけるかのようにして…。

彼女は恐怖に震えながら夢と同じコンビニに駆け込むと、店内から携帯で恋人に電話し、このままでは殺されるから迎えに来て欲しいと頼んだ。

彼は最初は「何をバカなことを」という感じで話を聞いていたのだが、あまりにも彼女が真剣な口調で話すので車で迎えに来てくれることになった。

彼女はコンビニの中で雑誌を読む振りをしながら待ち続け、やがて彼が迎えに来ると二人で一緒にコンビニを出た。

そして、二人は夢の中で男が隠れていた場所の近くを避けて歩き、無事に彼の車まで辿り着いたのだ。

これでもう大丈夫と安心した彼女は、あの男はどうなったかと気になり後ろを振り向いた。

すると、なんとあの男は彼女からわずか数メートルの場所に立ち、恐ろしい形相でこちらを睨んでいるではないか。

驚いた彼女は急いで車に乗りこむ。するとその男は一言、こう叫んだ。

「夢と違うことすんじゃねーよ!」

関連記事

昭和さん

私の地元は田舎で、山の中にある新興住宅街だった。新興と言っても、結局発展し切れなかったような土地だった。 私は山に秘密基地を作り、友達とよく遊びに行ったものだった。 ある日…

アパート(フリー写真)

出前のバイト

大学生の頃に体験した話。 俺は下宿近くにある定食屋で出前のアルバイトをしていた。 本業の片手間の出前サービスという感じで、電話応対や梱包、配達まで調理以外のをほぼ全てを俺…

古民家(フリー写真)

幸恵

戦後すぐのお話。 哲夫という田舎の青年が、カメラマンになるために上京しました。 哲夫には幸恵という恋人が居ました。 幸恵は両親の反対を押し切り、哲夫と一緒に上京。貧し…

ビジネスホテル

警備のアルバイト

学生時代、都心のビジネスホテルで警備のアルバイトをしていました。 従業員の仮眠時間帯、深夜12時から明け方の5時まで、フロントの業務と巡回を一手に担っていたのです。 門限…

おかめの面

出張で東北の方へ行った。 仕事の作業が完了した時には、帰りの新幹線に間に合わない時間になっていた。 宿泊費は自腹になるので、安いビジネスホテルを探してチェックイン。 …

グラス

青いワンピース

結婚して4年目のある日の出来事です。当時、私の会社にはとても可愛らしい事務員の女性が新しく入社していました。浮気するつもりはさらさらなかったものの、その女性のことが気になっていました…

会いに来た子供

彼は大学生時代にバンドを組んでいた。 担当がボーカルだったということもあり、女の子からも相当モテていた。 放って置いてもモテるものだから、かなり奔放に遊んでいたのだという。…

競売物件

競売物件

自動車免許を取りに免許センターへ通っていた時に仲良くなった人から聞いた話。 筆記試験が終わり、知り合いも来ていないし一人でぼーっとしていると、20代後半くらいのサラリーマン風の人…

夜の町並み(フリー写真)

夜道のいざない

去年の7月くらいに体験した話。 うちの母方の祖父が亡くなり、通夜と葬式のため親の実家の北海道へ行きました。 当日は祖父を神社まで運び、その夜は従兄弟や叔父、叔母とみんなでそ…

テレビの記憶

これは昔、NHKで地方の紹介をする番組で放送されました。 それは祭りとか風習とかで毎週一つの土地をクローズアップして紹介する番組だったのですが、一度ある雪深い地方が紹介された時、…