変なタクシー

f0145372_746485

昨日、ひどく恐ろしい体験をしました。

便宜上昨日と言いましたが、実際は日付が変わって本日の午前1時過ぎのこと。

残業のため終電で帰ってきた私は、家の近くまで走っているバスがもう終わっていたため、タクシーに乗って帰ろうとしました。

タクシー乗り場にて暫く待つこと数分。

すぐに自分の乗る番が来て、私はタクシーに乗り込むと、家の近くのコンビニを指示しました。

残業でかなりイライラしていたので、私は相当に不機嫌でした。

なので仏頂面で窓の外の景色をひたすら眺めていました。

ここまではなんと言うことのない普通の話です。

しかし、普段からタクシーに頻繁に乗る私は、今日に限って何故か運転手の真後ろに座りました。

普通一人でタクシーに乗るならば、乗ってすぐの助手席の後ろに座りますよね?

でも、自分でも解らないのですが、今日に限ってわざわざ運転手の真後ろまで移動したんです。

そしてその時はその不思議な行動を疑問にも思いませんでした。

数分ほどタクシーに揺られていると、タクシーは何故目的地までの道を外れて見当違いの方へ曲がります。

私は慌てて運転手に言いました。

「ちょっとちょっと。何でそこで曲がるんです?そっちじゃないでしょう」

しかし運転手は不思議そうに聞き返してきます。

「え?だってお連れさんの家のほうが近いですし、先にそっちに行かれるでしょう?」

一瞬運転手が何を言っているのか理解できませんでした。

「お連れさんて、何のことです?」

するとタクシーは止まり、運転手が後ろを振り向きました。

「お客……」

そう言うと運転手の顔が明らかに強張りました。

薄暗い車内の中で明らかに表情が動揺しています。

「あ、あれ。もう一人女性の方と一緒でしたよね?」

もちろん車内には私と運転手の2人しかいません。女性など乗っているわけがないのです。

「何言っているんですか。私は初めから一人でしたよ!ちょっとふざけないでくださいよ!」

残業でイライラしていた私はかなりきつく運転手に言いました。

「そんな……だってお客さんと一緒に髪の短い女の人が一緒に乗って。

それでお客さんは○○までで、女の人は××までと確かに……」

運転手はおろおろしながら私に弁解します。そして突然こう言いました。

「お客さん料金要らないからここで降りてください!」

いきなりの事で呆気に取られましたが、私はその言葉にひどく腹を立てました。

「何を言い出すんですか。訳の分からないことを言ったり、途中で降りろだの。何なんですか!?」

「いいから!お願いですから降りてください!お金は要りませんから…」

運転手の懇願に立腹しながらも、こんなおかしな運転手のタクシーになんてこれ以上乗っていられないと思い、私はそこで降りました。

そして、そこから歩いて帰ることにしました。

歩きながら私は、ふとあることに気づきました。

運転手が言っていた××という場所。

確か昔に帰宅途中のOLがストーカーに襲われて亡くなったという事件が起こった場所でした。

それを思い出した私は、途端に怖くなって家まで走って帰りました。

こんな怖い思いをしたのは生まれて初めてです。

今日も残業で仕事が遅くなるだろう事が分かっていたので、仮病を使って会社を休みました。

もうタクシーには乗りたくなかったですから……。

関連記事

夜の学校

夜の学校

小学6年生の夏休み直前の話。その日、僕は肝試しに誘われていた。 メンバーは友達の新堂君、荒井君、細田君、僕の4人。舞台は学校だった。 昼休みに新堂君が通用口の鍵を開けたとの…

煙草を持つ手(フリー素材)

マイルドセブン

先月、仕事で千葉のホテルに一週間ほど滞在した。そこは普通のビジネスホテルで、滞在2日目の夜の事。 タバコが切れたので階に設置されてる自販機で買おうと部屋を出て、自販機の所まで来た…

子供の寝顔(フリー写真)

した

親父から昔、何度か聞かされた話。 俺が2、3歳の頃、一緒に住んでいた曾祖母が亡くなった。 その頃はまだ、人が死ぬということもよく解っていなかったと思う。 ※ その3日後…

悪魔の書

ある神父の息子の恐怖体験

中学生の頃、俺は横浜に住んでいた。 親父は地元の教会で神父をしており、性格は聖職者らしからぬざっくばらんとしたものだった。信者たちからの人望も厚かった。 信仰熱心な家庭と…

集合住宅(フリー素材)

団地のエレベーター

高校時代の時に体験した話。 当時、俺の友人Aが住んでいた団地には、割とベタな怪談があった。 5年程前にそこの2階の住人が自殺したのだけど、その人は自殺当日の夜23時半頃に、…

登校する小学生(フリー写真)

モウキカナイデネ

この話を誰かに話す時、 「確かにその話、滅茶苦茶怖いけど、本当かよ?」 と言われる事がある。 霊が出て来るような話の方が、余程現実味があるからだ。 これは俺が実…

海(フリー写真)

赤旗が出る日

地元は海の前の漁師町(太平洋側)の話。 ここ数年は少なくなったが、幼少の頃から海女さんの真似事をしてアワビやサザエを採ったり、釣りをするのが子供の遊びだった。 朝に堤防まで…

青木ヶ原樹海(フリー素材)

青木ヶ原樹海探索記

自分は卒業旅行で富士の樹海に行った大馬鹿者です。 わざわざ九州から青春十八切符を使い、普通列車を乗り継いで…。 とにかく幽霊を見たいという目的で、友人と二人で二日掛けてのの…

人が溺れてる

友達から聞いた話。 夏の暑い日の真夜中、仲の良い友達数人で海辺で花火をして遊んでいました。 薄暗い砂浜を、花火を向け合ってわーわー言いながら走り回っていると、友達の一人がい…

肋骨を掴む手

最寄の駅からおいらの会社まで自転車で通っていたことがある。 その日は仕事が結構早めに終わり、少しずつ暗くなる路地裏を自転車で家路を急いでいた。 蒼い宵闇が降りてくる。境界線…