出会った時間

公開日: 怖い話

山道(フリー写真)

これは以前働いていた会社の人の体験談です。

会社の仕事が一段落つき、何の話からか怖い体験の暴露大会になった時に聞いたSさんの話です。

Sさんは、遠く離れた所に住む友人の家へ泊まりに行きました。

その途中、富士の樹海辺りを車で走っていた時のことです。

道路の前方の端に、丸太のような物が見えたそうです。

危ないなあと思いながら見ていると、それは道路の中心の方へずるずると移動しているらしいのです。

近くまで来た時、Sさんが見たものは、ぐったりとした女の人の腕を引っ張りながら這っている男の人でした。

彼はSさんに助けを求めました。

二人は樹海で一緒に死のうとしたらしいのです。

しかし急に心変わりしたらしく、助けを呼ぶために、既に意識の無くなった彼女を引っ張りながら道路まで必死に這い出て来たそうです。

この近くには電話もありません。

Sさんは二人を病院に連れて行かなくてはと、ぐったりしている二人を車に運びました。

この時、彼女の方は、既に亡くなっているのがはっきりと判ったそうです。

でも彼は彼女を助けたい一心からか、病院へ連れて行ってくれと頼んだそうです。

Sさんは、街へ出れば病院があるだろうと必死に探しました。

その間、彼は頻りに「病院はまだですか」と声を掛けます。

Sさんは彼に「もうすぐ着くから」と励まし続けたそうです。

やっと病院に着き、Sさんは事情を説明し、二人を担架で運んでもらいました。

そして、これから警察の人が事情聴取に来るということで、腰掛けて待っていたそうです。

やがて警官が来たので、その時の状況を説明しました。

「…という感じで道路まで出て来たんです」

それを聞いた警官は、

「変ですね…」

と言います。

Sさんは彼女の事だと思い、

「抱き上げて運んだ時は既に亡くなってました」

と説明しました。

すると警官が、

「いや、いいんです。確かに彼女は死亡してます。ただね、貴方の話はおかしいんですよ」

と言うので、Sさんは

「何がおかしいんですか。こっちだって必死だったんです」

と言い返しました。

すると警官が一言。

「貴方が出会ったという時間。既に二人とも死亡してるんですよ」

Sさんは真っ青になったそうです。

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