
3年前、私はグアムへダイビングに行った。
現地で名古屋から来ていたベテランのダイバーと知り合いになり、ある不思議な体験談を聞くことになった。
それは彼が1990年4月、インドネシアの小さな漁村に1週間ほど滞在していたときのことだった。
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その村でダイビングを楽しんでいた彼は、滞在2日目の深夜、突如「ゴオオオオオッ!!」という爆音で目を覚ました。
音は海の方向から聞こえたという。
さらに、その直後、夜空に光線のようなものが走った。
雷とは明らかに異なる光だったそうで、彼は「ジェット機でも墜落したのではないか」と疑ったが、やがて再び眠りに落ちた。
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そして、それから3日後の午後。
浜辺でビールを飲みながらのんびりと過ごしていた彼は、10メートルほど先で騒ぐ原住民たちの声に気づいた。
何人もの村人が、魚網を引き上げたばかりのようで、子供たちも集まり、大きな興奮の渦に包まれていた。
その様子は、単なる漁の喜びとは思えない異様さがあった。
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興味を惹かれた彼は立ち上がり、砂浜へと足を運んだ。
近づくと、砂の上には無数の魚がばら撒かれており、その中央に、ひときわ大きな獲物が横たわっていた。
それは、全長3メートルはあろうかという巨大なサメだった。
サメはすでに息絶えており、腹部が異様に膨らんでいた。
「子持ちザメか?」と彼は思い、ふと腹の中を覗き込んだ。
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だが、そこで彼は凍りついた。
切り裂かれたサメの腹からは、内臓にまみれた奇妙な「何か」がはみ出していた。
それは、身長150センチ足らずの、小さな人間のような死体だった。
ただし、よく見ると胸から下はひどく損傷し、半ば溶けかけている。
そして、それは明らかに「人間」ではなかった。
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彼の記憶に残るイメージ、それはテレビのUFO特番などでよく紹介される異星人、「グレイ」に酷似していた。
大きな黒目、小さな顎、異様な骨格。
それは、どこか現実離れしていたが、目の前に確かに存在していた。
さらに彼は、サメの頭部に気づいた。
まるで高熱のバーナーで焼かれたかのような、直径30センチほどの焦げ跡があったのだ。
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「あの爆音、あの光線は、何だったのか」
彼は今でも考えるという。
そしてあの時のサメの腹の中にいたもの──
あれは、地球の生き物ではなかったのではないかと。
彼の語り口は淡々としていたが、その眼差しの奥には、忘れられない体験の影が深く刻まれていた。
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それは、ダイビングの旅先で偶然聞いた、一人の男の記憶の断片。
だがそれは、確かに現実の中で起こった「何か」だった。