タグ: 実話風

海鳴りの入り江

離島の調査で訪れた禁足地の入り江。島民が「ウミナリ」と呼ぶその場所で、研究者は二時間半の記憶を失う。手に残った青い痣と、百キロ先でも聞こえる海鳴りの音。…

未来から来た男

煙が上がっとる三日のあいだは、はざまで人と口をきくな——父の言い付けを、小学生だった俺は何も知らずに破りました。昭和五十七年の常滑で五回だけ会った男と、母のカレ…

変わった妹

谷で拾った字は声に出して読むな——祖母の言い付けを、俺は面倒くさがって妹に押し付けました。その晩から妹は声を失い、三十七日目に姿を消します。徳島の山あいの集落で…

カスパー・ハウザー

昭和四十年、山あいの製材の町の終点のバス停に、素性の知れない色白の若者が現れました。暗がりで目が利き、どの階段でも必ず十三段目で止まる人でした。カスパー・ハウザ…

無人マンション

解体を待つ無人の棟に、毎晩ひとつだけ灯りが点いていました。しかもその灯りは、取り壊しの進み具合に合わせて、一週間ごとに正確に一階ずつ下へ降りてくるのです。更地に…

無人島ビデオ

映像研究会の部室に、ラベルのないテープが一本だけ残されていました。瀬戸内の無人島で撮られた合宿の記録です。行きも帰りも六人、数はきちんと合っています。それなのに…

イタズラ好きな何か

子どもの頃、私のそばにはいつも、姿の見えない「いたずら好きな何か」がいました。肩を叩き、時計を狂わせ、ときに私を危険から守った、その正体とは——。やがて知ること…

丘の上の古い療養病棟。毎週末、娘の迎えの車で外泊していた患者Kさん。ある月曜、戻らない彼の自宅へ電話をかけると、妻は「うちに娘はいない」と静かに告げました。誰も…