知らない部屋

集合住宅(フリー素材)

私が小学校に上がる前の話。

当時、私は同じ外観の小さな棟が幾つも立ち並ぶ集合団地に住んでいました。

ある日、遊び疲れて家に帰ろうと「ただいまー」と言いながら自分の部屋の戸を開けました。

でもそこは自分の部屋ではなく違う人の部屋で、暗い中でおじいさんが一人テレビを見ていて、こちらを振り向きます。

『うわっ、間違えた…』と思い、何も言わず慌てて戸を閉め、よく考えたら自分の部屋はもう一つ前の10棟の2階。そこは9棟の2階でした。

それで急いで10棟に移動し「ただいまー」と戸を開くと…。

さっきと同じ知らないおじいさんの部屋で、やはり暗い中にテレビが点いていて、こちらを振り向いて見ている。

『あれっ…』と焦った私は、またも何も言わず戸を閉める。

『あれっ、あれっ?』とパニック状態になり、階段を降りて場所を確認すると、さっき確かに10棟へ移動したはずなのに、自分が立っているのは9棟の前だった。

もう訳が解らず不安で仕方がなかったので、「おかーさーん!!」と叫ぶと、10棟の自分の部屋の窓から母が顔を覗かせ「あんた何してんの」と言う。

「おかあさん!!」と今にも泣きそうになりながら訴えると、母が玄関から出て来てようやく自分の部屋に帰る事が出来ました。

その後、9棟の2階に住んでいるのはおじいさんではなく、夫を亡くしたおばあさんだという事が判りました。

今でもあの経験が何だったのかよく解りません。白昼夢だったのかな…。

関連記事

坂道

時間が止まる坂

この話は私が小学2年生の時のことです。 クラスで仲の良かった友人が、興奮気味に「すごい場所があるんだよ!今日行こうぜ!」と誘ってきた。 その友人は普段から「宇宙人を見た」…

夜の駅

静寂の駅にて

昔、北陸のとある地域に出張で訪れたときのことです。私はあらかじめビジネスホテルを予約しておき、そのホテルを拠点にお得意様を順に訪問して回る計画を立てていました。 その日の最後の…

小島(フリー写真)

海女さんの心霊体験

私は23歳で、海女歴2年のあまちゃんです。 泳ぐのが好き、結構儲かる、という理由でこの仕事をしていますが、不思議な体験をした事があります。 ※ 海女になりたての頃、自分に付い…

夕日(フリー写真)

ドウドウ

小学校低学年の頃、友人Kと何回か『ドウドウ』という遊びをした。 どのような遊びかと言うと、夕方17時~18時くらい、家に帰るくらいの時間になると、俺かKのどちらかが 「ドー…

厨房(フリーイラスト)

後天性の霊感

大学時代に横浜の◯内駅前のファミレスで、夜勤調理のバイトをしていました。 一緒に働いているバイトに二名、いわゆる見える人が居ました。 その二人(AとBにします)曰く、そのフ…

天井裏

不可解な手紙

去年の暮れ、私が勤める編集プロダクションに一通の手紙が届きました。私宛ての名指しの手紙で、エッセイの添削と執筆指導を求める内容でした。 初めての事態に不信感を抱きながらも、返信…

歯型

これは今から13年前に起きた出来事です。 今でもあれが何だったのか解りません。早く忘れられれば良いと願っています。 当時、私は上京してきたばかりで、右も左も分からない状態で…

台湾

混同された記憶

私は現在、仕事の都合で台湾に住んでいます。宿代もかからず、日本からも近いため、友人が時々遊びに来ます。この話は、そんなある時の出来事です。 今年の2月初旬、高校時代からの親友で…

抽象模様(フリー画像)

ヤドリギ

あまり怖くなかったらすまん。ちょっと気になることが立て続けにあったんで聞いて欲しいんだ。 自分は子供の頃からオカルトの類が大好きでな、図書館などで読んでいたのは、いつも日本の民話…

前世を詳細に語る幼児

「前世」というものの概念すらないであろう幼い子が、突然それを語り始めて親を驚かせたという話が稀にある。 米国では今、オハイオ州の幼い男の子が自分の前世を語り、それが1993年に起…