自動ドアが認識しない人間

FamilyMart_Somanikkeshi_Shop

大学二年の夏休みに入る少し前からだったかな…。

コンビニやらスーパーやらの入り口、とにかく全ての自動ドアが俺に反応しなくなった事があった。

それまでは普通に入ることの出来ていたコンビニなのに自動ドアが開かない。

立ち位置を変えたり色々やっても開かず、店員が気付いて内側に立って開けてくれたのは良かったんだが、買い物を済ませて出る時になってもまた開かない。

『ええー?』と思いながらも、またもや店員がドアの前に立つとあっさり開いた。

「何でしょうね」みたいな事を言いつつ互いに首を傾げた。

それから一ヶ月以上の間、ずっとそれが続いた。

そのコンビニだけでなく、近くのスーパーやゲームショップ、電器店に至るまで、どこに行っても自動ドアが開かない。

コンビニは毎回自動ドアの前で右往左往しているのが恥ずかしくなり行くのを止めた。

どうしても買い物をしなければならない時には、友人と一緒に行くか、人が多い時間に行って共連れで入り、出る時も共連れで…みたいな事をしていた。

幸い大学の建物には自動ドアは導入されていなかったので、留年の危機(夏休み前=試験シーズンなので…)には至らなかった。

とは言え、その頃一人暮らしをしていた俺としては、食料品やらの買い出しにさえ気を遣い、どこへ行くにも後ろめたい思いをする、というのはなかなか精神的に堪える物があった。

事態が治まったのは前述の通り一ヶ月程経ってからだった。

どうせ夏休みだし気分転換にと、田舎に遊びに行って、一週間ほど畑仕事の手伝いやら何やらの、自動ドアとは縁がない生活を送っていた。

そして、田舎から一人暮らししているアパートへの帰路で、自宅最寄り駅前のコンビニに寄ったら、あっさりと自動ドアが開いた。その時は正直「おおっ!」と思ったね。

それから最初に事が起きたコンビニを始め、近場の店に何軒か行ってみたところ、これまでの事が嘘かのようにどの自動ドアもあっさり開いた。

あれからもう5年くらい経つが、あんな経験はあの時だけだったな。

それでも結構印象的な体験だった事もあってか、未だに夢で自動ドアの前に立ち尽くす夢を見たりするし、たまに反応が悪い自動ドアがあったりするとビクってなる。

関連記事

人形(フリー写真)

アンティークドールの夢

中学校に入学した時、入学祝いで祖母からアンティークドールを貰った。 古いドールだったけど、しっかり手入れされていて、汚いという印象は受けなかった。 それどころか、銀色の髪…

幼稚園児(フリー写真)

死期を悟る子

小学校に上がる前の小さな男の子の話です。 その子が通っていた幼稚園で乗り物をテーマに絵を描くことがあり、子供達はそれぞれ船や飛行機、車などの絵を描きました。 小さな子供の…

雨の日の傘(フリー写真)

谷の置き傘

小学生くらいの時の話。 親戚の家が辺鄙な場所にあった。裏手には山、逆側には谷がある。 子供の遊び場としては最高だったのだけど…。 そして谷にはよくゴミが捨てられる。山…

町並み

存在しない昭和の町並み

これは高校1年の夏休み、田舎の高校に通っていた時の話です。 部活動が終わったのは20時。その後、部室で友人たちと怖い話をして盛り上がり、気がつけば23時を回っていました。私たち…

狐の社(宮大工2)

俺が宮大工見習いを卒業し、弟子頭になった頃の話。 オオカミ様のお堂の修繕から三年ほど経ち、俺もようやく一人前の宮大工として仕事を任されるようになっていた。 ある日、隣の市の…

廃ホテル(フリー写真)

廃ホテルでの肝試し

学生時代の夏、男4人と女1人の計5人で、とあるホテルの廃屋へ肝試しに行った。 そのホテルの場所は別荘地のような、周りを森に囲まれた場所に建っていたので、夜23時過ぎに着いた頃には…

コンサートホール

某コンサートホール

以前、某コンサートホールでバイトをしていました。その時の体験を話そうと思います。 初めに気が付いたのは、来客総数を試算するチケット・チェックの場所でした。 私たちはもぎった…

工場

不可解な扉の向こう

幼い頃の私には忘れられない体験があります。それは幼稚園の頃、よく遊びに行っていた祖父の家で起きた出来事です。祖父の家は関東のどこか、田舎でも都会でもない中途半端な場所にありました。そ…

白い影

当時、私は精神的に荒んでいて、よく大型バイクをかっ飛ばしたりしていました。 その日もバイクで走っていたのですが、広めの幹線道路は渋滞していました。 そこで、道の左端をすり抜…

金縛り中の他者的視点

以前、一度だけどうにも奇妙な体験をしたことがある。 金縛りというものは多くの人が経験してると思うが、あれは脳の錯覚だ。 本当は寝ているだけなのに、起きていると脳が勘違いをし…