北陸の無人駅
昔、北陸の某所に出張に行った時の事。
ビジネスホテルを予約して、そのホテルを基点にお得意様を回る事にした。
最後の所で少し飲んで、その後ホテルに戻る事にした。
※
ホテルまで鈍行列車で20分。疲れていたせいかうとうとして、気が付いたら降りるはずの駅だった。
あっと思い立ち上がった時はもう遅く、列車は出発してしまっていた。
4、5分して、次の駅に列車が停車したので急いで降りた。降りてからふと気付くと、がらんとしたホームに私一人。
ホームの端に掘っ立て小屋のような木造の建物があり、それが駅舎だった。蛍光灯がぼんやりと灯っている無人駅。
降りるはずだった一つ手前の駅は、特急も停車しローカル線も交わる駅で、その県内では県庁所在地に続いて二番目の大きな市。
その駅から一つ目の駅で、しかも本線なのにどこかの寂れたローカル線のような雰囲気。
駅前は真っ暗。コンビニ一つ無い。映画で見たような古臭い家がひっそりと建っている。
次の列車は一時間後。列車が来るまでの一時間、恐ろしいくらい何の音もしなかった。
※
無事ホテルに着き、次の日の時刻表をチェックしていると不思議な事に気が付いた。
普通列車を待っていた一時間の間、本線なので特急が通過するはずだし、反対方向の普通列車も通過するはず。それなのに全く列車が通過しなかった。
静かな中に突然、私が乗りたい普通列車がやって来た感じだった。
※
その半年後、再びそこに行く機会があり、昼に時間が取れたので何となく行ってみた。
駅は小さいけれど、木造ではなく鉄筋。駅員さんが一人居た。駅前には小さいけどロータリーがあり、コンビニもあった。
半年も経てば、駅も駅前もがらりと変わるかもしれない。でも、駅もコンビニも特に新しい感じではなかった。
※
今でもあの時、時間がずれてどこかに紛れ込んでしまったのではないかと思う事がある。
時々、もしあの列車が来なかったら…と思うと怖くなる。