くる!

42d68fd4e0a4fc4af344fa78d3e1cdac

ウチの叔母さんはちょっと頭おかしい人でね。

まあ、一言で言うと「時々昔死んだ彼氏が私を呼ぶのよ」って台詞を親族で飯食ってる時とかに平気で言う人でね。

2年くらい前から「離婚したい」が口癖だったんだ。

それで3月にその叔母さんの娘が大学に合格して、じいちゃんの家で親族で集まって合格祝いしたんだよ。

最初は和やかな雰囲気だったんだけど、暫らくすると叔母さんがまた離婚話を始めてね。旦那子供の前でね。

旦那さんはホントすげぇ良い人で、どんだけ良い人かってーと、長くなるから割愛すっけど、とにかく出来た人でね。

その「離婚話」ってのがいかに叔母さんの勝手な話かってのは、もう叔母さんの母親である家のばぁちゃんとじいちゃんが旦那さんに泣いて謝る位なんだ。

そいでまぁ祝いの席で始まった離婚話。

最初はみんな「またかよ…」ってスルー方向だったんだけど、ふと叔母さんの娘の方見るとなんかすげぇ泣きそうだったのね。

もう恥ずかしくてしょうがないみたいな感じね。娘はすごい頑張り屋でホント今時珍しい位イイ子でね、普段の彼女知ってるからなんかそれ見たらスゲェ腹が立ってきてさ、んでじいちゃんも真っ赤になってて今にもブチ切れそうだったから「チィキショイ!!俺がやってやるぅ!」って思って「叔母さんいい加減にしろよ!みっとも無いぞ?」的な言葉を言ったわけです。えぇぶちまけましたよ親族代表としてね。

あん時の叔母さんの顔は今でも忘れないね。最初真っ赤になった顔が一気に真っ青になっててってね。んで俺が喋り終わるや否や「あんたみたいなガキに何が分かるってのよっ!!」って超シャウト。

ホント内心すげぇ怖かったけど、でも「よく言った!」って顔してる親族一同の顔見たらここで退いたらダメだと思って、尚も喋り続けるとホント顔面蒼白になってね。ふらつき出したんだ。

んで流石にこれ以上はヤバイかな?って思ったウチのママンが「それ位で…うん、先に帰ってなさい」って俺ら子供集を家に戻るように促したのね。

因みにウチとじぃちゃん家は同じ敷地にあってね、徒歩10秒ぐらいなの。

そいで俺と姉貴と弟と従妹とで家に帰って、4人でゲームやってたんだ。

従妹にはホント何度も謝ったんだけど逆に「ありがとう」とか言われて、姉貴と弟には「よく言った」とか言われて、正直まんざらでもなかったんだ。

暫らくするとウチのママンが戻ってきてね、開口一番にこう言ったんだよ。

マジで一言一句忘れもしない。

「いますぐ荷物まとめておじいさん(親父方)のとこに逃げなさい」

ってね。

「は?何?何かあったの??」

ワクワクが隠せない姉貴と弟の声のトーンとは対照的にママン声のトーンは低くてね、とりあえず従妹に遠慮して廊下で2人で話してたんだ。

「あの後はもうアンタに対する罵詈雑言の嵐よ、罵詈雑言なんてモンじゃないわよ、『殺す』って言ってたわ。もう誰が何言っても聞きやしないし、今晩おばぁちゃんの家に泊まるみたいだし」

遠くから聞こえる桃鉄の BGM。あんなに暗く聞こえたのは初めてだった。

とりあえず色々突っ込みたい事もあったけど、

「まさか?(笑)」

って笑って部屋に戻ったんだ。

その後おじさんが来たり色々あったんだけど、結局11時頃にはおじさんと従妹は叔母さん残して帰ってね。

んで3時ぐらいにはママンもパピーも弟も寝てて、俺と姉貴2人で映画観てたんだ。電気消してね。

そしたら庭の方から砂利の上を歩く音がしてね。もうそん時は前置きなしで俺も姉貴も直感したんだ。

「叔母さんだ…」

映画の音量下げて耳凝らして外の音を聞いてると、確実に俺の部屋の窓んとこグルグル回ってんだよ。

最初は面白半分で笑ってた姉貴も急にマジになってさ、

「アタシが上手く足止めするから裏口から逃げろ!んですぐ車庫に行け!こりゃホント冗談じゃないよ」

とか言い出す始末でね。俺も軽くパニくって何かバッグに下着とか詰め始めてね。とりあえず車のキーと財布と携帯と煙草持って裏口でスタンバイしたんだ。そんで同時タイミングで外に出る俺と姉。

俺の部屋の窓と車庫は 7メートルぐらいあって、今のままじゃ下手すりゃ車に乗ろうとすると叔母さんと鉢合わせになっちゃうんだ。

だから物陰に隠れて耳を凝らしていると姉貴の声が。

「叔母さんどうしたのこんな時間に?」

そっから先は姉貴の声しか聞き取れなかったけど、なんか段々声が離れていった感じがしたのね。そんで時折笑い声とかすんの。

さすが姉貴は叔母さんに超好かれてるだけあるな!とか思いながらダッシュで車庫に行って車のエンジンをかけたのね。

「よし!行けるっ!」

そう思い、ギアをバックに入れてライトを着けると、ライトの先には物凄い顔をした叔母さんの姿が映ってたんだ。

あの瞬間は本当に背筋が凍った。だってさ…。

作業用スコップ持ってたんだもん。

そっから先は鬼バック。急発進。

チャーリーなエンジェルも真っ青なフルスロットル。

近くのコンビニに着いて速攻姉貴に電話をすると、

「いやスコップですよ!(笑)でもやっぱ完全に殺意の対象はお前のみ。アタシとか全然笑顔でトークしてたよ。あの酒席で誰もお前の事をフォローしなかったのは大正解だったね」

と大爆笑な姉。

「殺意の対象が俺のみじゃなかったらあんな無茶な事しねぇよ」

とか言いつつも内心家族が心配で、その日は姉貴と弟に寝ず番をした。

もち武装した状態で。そして明け方着いた祖父の家で自分の車を見てビックリ。

傷だらけ。引っかき傷だらけ。

つか叔母さんさ…。

車庫にいたのかよ…。

叔母さんはその数日後神奈川だかの病院に入院して、今は退院して元気だそうです。多分。

それまでいろんな心霊スポット行ったりしたけど、生きてる人間が一番怖いです。

関連記事

砂風呂

昔ね、友達と海に行った時の話なんだけど。 砂風呂をやろうとして、あんまり人目が多い場所だとちょっと恥ずかしいから、あんまり人気のない場所で友達に砂かけて埋めてもらったんだ。 …

カーテン(フリー写真)

少年とテレビ

これは僕の姉が、今の旦那と同棲中に体験した話です。 姉は何年か前に、京都の市内にあるマンションに旦那さんと住んでいました。 当時旦那さんは朝早い仕事をしており、毎朝5時には…

山(フリー写真)

山に魅入られる

小学校5年生の頃、私が祖母の家に遊びに行った時の話。 当時は夏休みになると祖母の家に何週間も泊まりに行くのが定例となっていて、地元の子供達とも夏休み限定の友人として結構打ち解けて…

ガソリンスタンド

ある若い男がガソリンスタンドに行った。 車の窓拭きをしてくれている店員が、凄い顔で車の中を睨んでくる。 クレジットカードで会計をしたら、このカードは不正だから降りろといわれ…

口

笑い女

先週の金曜、会社の先輩の大村という男が死んだ。 もちろん直接現場を見た訳ではないけど、マンションの自室で、自分の両耳にボールペンを突き刺して死んでいたらしい。 大村自身の手…

エクスカリバー

エクスカリバー

ゲーム好きな人なら「エクスカリバー」という剣の名前を一度は聞いたことがあるんじゃないだろうか。 洞窟の奥深く、地面に刺さるその剣は、選ばれた勇者にしか抜くことのできない…みたいな…

鎌爺

小学生の頃、田舎に住んでいた時の話。 その村には鎌爺という有名な爺さんがいた。その爺さんは身内の人が面倒を見ているらしいが痴呆症らしく、いつも同じ道端に座っていてボーとしている人…

結婚指輪(フリー写真)

ムサカリ

俺は今は大きなデザイン事務所に勤めているのだけど、専門学校を出て暫くは、学校から勧められた冠婚葬祭会社で写真加工のバイトをしていた。 葬式の場合は遺影用としてスナップから顔をスキ…

かごめかごめ

この話は、実際に友人が遭遇した話で、彼もその場所はついに教えてくれませんでした。 実際に人が2人死に、彼も警察にしつこく尋問されたそうです。 これは私が大学時代にその友人か…

井戸

蠱毒

心の整理が出来てきたので、書こうと思います。長文になります。 ※ 俺には二人の大切な友達がいました。 小学校からの付き合いの友達で、社会人になってからもよく一緒に酒を飲みに行…