なりすまし

影(フリー写真)

集団自殺(及び自殺未遂)がありました。男女約6名。

一酸化炭素中毒で死のうというものですが、亡くなったのは3人。

生存者の話では、ネットで知り合って共同で自殺しようというもの。

このお話は生存者の一人、A子さんにまつわるものです。

病院で意識を取り戻したA子さんに警察が事情聴取をしようとすると、A子さんは

「私は何故ここにいるのか」

と、逆に警察の人に尋ねました。

警察は、

「君は自殺を図って死にかけたのだ」

と一連の事件について説明すると、A子さんはガタガタと震え出します。

A子さんは自殺の記憶など無く、そのようなネットへの書き込みをした覚えもないのです。

しかし、実際にはA子さんのパソコンからの書き込みが確認されました。

現場には自筆の遺書も発見されました。

実はその10日程前から、A子さんは妙な行動を取ることがありました。

弟や母親が言うには、やけ食いをしたとか、いきなりA子さんが壁を殴り出したとか。

しかしA子さんにはどれも記憶がなく、そう言えば最近意識が失くなることが多かった…。

不気味な絵や言葉が自筆で書かれたノートが机の上に置いてあったり、自分の腕にリストカットの痕がついていたり。

頭の良い皆さんならもうお分かりでしょう、これは二重人格というものです。

どうしてこの人格が突如A子さんに現れたのか? 原因は判りません。

母子家庭ですが、特に虐待やいじめなどといったトラウマとなる経験もありません。

数日前から突如に生まれたものです。

このもうひとつの人格は日常でA子さんになりすまし、自殺しようと(A子さんを殺そうと)行動するようになります。

ある時、A子さんはまた意識を失い、気が付くと暗い森の中。

ここは一体どこなのか判らぬまま必至に森を彷徨い歩き、命からがら森を抜け出し、通行人に助けを求め保護されました。

そこは富士の樹海でした。

ある時、A子さんは再び意識を失いました。今度は本格的なリストカット。

母親が発見し、病院で一命を取り留めました。

今まで3度死にかけ、いずれも何とか死なずに済みましたが、単なる悪運なのでしょうか?

『もう一人の方』の自殺はどうも爪が甘いような、絶対死ねる方法を取っていないような…。

しかし確実なのは、A子さんの意識を失う時間が確実に長くなってきたということです。

その後、A子さんは失踪します。

今のA子さんは果たして『どっちのほう』なのでしょうか。

と言うより今、生きているのでしょうか。

関連記事

無人マンション

会社までの通勤時に取り壊し予定の無人マンションの近くを通るのだが、そこは飛び降り自殺が多く、自殺者の霊の目撃情報も多い曰くつきマンション。周りに街灯も少ないし夜はかなり不気味で怖い。 こ…

やっと見つけた

俺が体験した洒落にならない夢の話。 夢の中で俺は葬式の招待の手紙を受け取った。 それが誰の葬式か分からないが、行ってみることにした。 その家に行ってみると、俺と同じく…

アパート(フリー写真)

住人の目

一昨年まで住んでいたアパートの話。 引っ越しをしようと決め、物件探しをしている時、 「ちょっとした縁で安く出来るから」 と、そのアパートを不動産会社から紹介された。 …

携帯電話

迷惑電話

ある日、知らない番号から電話が掛かってきて、おばさんの声で「鈴木さん?」と聞かれた。 でも自分は田中(仮名)なので、「いいえ違います」と答えたら「じゃあ誰?」と言われた。 …

縁の下

あるタクシー運転手の奥さんが、まだ5才になったばかりの子を残して亡くなってしまった。 父親は仕事柄出掛けている時間が長く、そのあいだは隣の家に子どもを預けていた。 しかし、…

達磨女

海外旅行中、ブティックの試着室に入った妻がいつまで経っても戻ってこない。 不審に思った夫が扉を開けると、そこに妻の姿はなく、持って入った服だけが落ちていた。 現地警察に通報…

夜の山道(フリー写真)

夫の墓守

俺が大学生の頃の話。 熊本大学に通っていたのだが、大学の周りには竜田山があり、その山道には霊園があった。 当時、俺は学園祭の実行委員会だった。 それで授業が終わる夕方…

新宿地下道

3ヶ月程前の出来事。新宿の某百貨店の地下道を通って某大型書店へ通じる地下道があるのだが、その道を歩いていた時の事。 通路に入って暫らく歩いていると、床と壁の間くらいのところに人間…

抽象模様(フリー画像)

ヤドリギ

あまり怖くなかったらすまん。ちょっと気になることが立て続けにあったんで聞いて欲しいんだ。 自分は子供の頃からオカルトの類が大好きでな、図書館などで読んでいたのは、いつも日本の民話…

マイナスドライバー

そんなに怖くないのですが聞いてください。 私がまだ4~6歳の頃の話です。 当時、私の家には風呂が無く、よく母親と銭湯に行っていました。 まだ小さかったので、母と女湯に…