夢が告げるもの

公開日: 異世界に行った話

町の風景

私は昔から、いわゆる「予知夢」のようなものを度々見る体質です。

いわゆるデジャヴとは違い、明らかに未来の出来事を夢の中で体験する感覚。けれど、それは決して便利な能力ではありません。

いつ起こる出来事なのか分からず、過去の夢と混じることもある。そもそもただの夢だった可能性も拭いきれず、信用に値しないことも多々あります。

見たいものを選べるわけでもないし、それで生活していけるわけでもありません。ただし、何か「嫌な予感のする夢」を見た時は、念のため用心するようにしています。

高校生の頃、ある夜のこと。

夢の中で、親しい友人が宇宙人のような存在に拉致され、激しく暴行される場面を見ました。場所は彼の家の近く。時刻は夕暮れ時。

目が覚めた直後、家のチャイムが鳴り、玄関には夢で登場したその友人が立っていました。

「ああ、今日は一緒に遊ぶ約束をしていたっけ…」とぼんやり思った瞬間、彼の服装が夢とまったく同じだったことに気付き、嫌な胸騒ぎを覚えました。

私は彼に「夕方からは、絶対に家の外に出るな」と忠告しました。

彼を含むごく親しい数人の友人には、私が予知夢を持つことを伝えており、彼も「わかった」と快く応じてくれました。

それで安心して私は夕方からアルバイトに向かったのですが――甘かったのです。

翌日、学校で再会した彼は、全身に打撲や擦り傷を負っていました。

話を聞くと、忠告通り夕方までは家にいたものの、何度も友人や先輩からの遊びの誘いの電話が入り、それをすべて断っていたとのこと。

それでも夕暮れ頃、父親から「母が事故に遭った」との電話があり、慌てて家を飛び出したのだそうです。

その帰り道、家の近くの路地で、夢の中と同じ場所で、別の高校の不良グループに絡まれ、夢と同じようにボコボコにされた――。

夢は確かに現実を告げていた。けれど、運命というものは、簡単には避けられないのかもしれません。

このように、夢が予知であると気付くのは、往々にしてその「瞬間」になってからのことです。

そんなある日、また奇妙な夢を見ました。

私は街を歩いており、そこへ一羽の鳥の着ぐるみのようなものを被った存在が現れて、「こっちに来い」と誘ってきます。

導かれるままに辿り着いたのは、古びた集会所のような場所。

そこには十数人ほどが集まり、何かを語り合っていました。

その中に人間はわずか4人程度で、残りはすべて鳥の姿。

その光景を見た私は、何とも言えない違和感と嫌悪感に襲われ、その場を離れる夢でした。

それから数日後、現実で奇妙な出来事が起こります。

街中を歩いていると、一人の見知らぬ男性に声を掛けられたのです。

「あなた、すごい力を持っていますね。私には分かるんです」

詳しく話を聞くと、彼は“特殊な能力を持った人々”を見分けられる能力を持っており、そういった人を集めた会合を開いているとのこと。

胡散臭いと感じながらも、なぜか心が引かれ、彼が案内してくれた来週の集会に参加することにしました。

そして迎えた当日、案内された場所は、あの夢の中で見た集会所そのものでした。

中にいた人々も15人ほど、夢と同じく4人の人間と、その他は得体の知れない存在。

夢の中にいた、太った中年男性や女子高生らしき人物も同じ位置に座っており、既視感に鳥肌が立ちました。

集会では各自が自分の持つ“能力”について語っていきましたが、その多くは胡散臭く、正直に言えば信憑性に欠けるものでした。

同じく予知夢を持つと語る男も現れましたが、彼の体験談は私とは全く異なり、共感できるものではありませんでした。

夢で感じた「嫌な気分」が現実でも蘇り、そろそろこの場を離れようと思った矢先に、私の番が回ってきてしまいました。

「気分が悪いので、帰ります」

そう言って立ち上がろうとした時、霊感があるという年配の女性が、私に向かってこう言い放ったのです。

「あんた、女の霊が憑いているわよ」

そう言いながら、いきなり背中を激しく叩いてきました。

頭に来た私は、礼も言わずその場を後にしました。

あの時、あの4人――夢に出てきた人間たちだけは、本物だったのかもしれません。

私が早々に帰ってしまわず、彼らに声を掛けていれば、また何か違った道が開けていたのかもしれない――。

今でも時々、そう思い出すのです。

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