異世界タクシー

タクシー

私の出身は宇都宮で、高校卒業後、3年制の専門学校へ行くために東京へ上京しました。夏休みのある日、赤羽駅近くの居酒屋で深夜まで飲んだ後、タクシーで家の近くの大きな公園まで帰ることにしました。

車内で運転手と話しているうちに、いつの間にか眠ってしまいました。目を覚ますと、タクシーは停車しており、運転手も隣で眠っていました。彼を起こして状況を尋ねたところ、彼も気づいたら寝ていたと言いました。更に、「現在地がわからない」とのこと。

外は真っ暗で、数十分寝ただけだと思いましたが、私の時計は止まっており、料金メーターは表示されておらず、無線も使えませんでした。私たちは人気のない町の路肩にいました。

慌てて周囲を探し、公衆電話を見つけた運転手は会社に連絡を試みましたが、「何でお前がタクシーに乗ってるの?」と驚かれました。

近くのコンビニで店員に場所を尋ねると、私たちは栃木県小山市にいるとのこと。しかも、日付は三日前でした。

怖くなった私は、家に電話をかけましたが、知らない女性の声がしてすぐに切れました。運転手はとにかく会社に戻ると言い張り、高速道路を使って赤羽まで戻ることにしました。

赤羽駅近くのタクシー会社に到着し、起きたこと全てを話しましたが、信じてもらえませんでした。運転手が電話を掛けたという事実も、会社では記録がないとされました。

疲れ切っていた私たちは、会社でソファーで休むことにしました。眠らずに過ごし、朝になるとニュースを見ると日付が元通りになっていました。

改めて家に電話をかけると、今度は普段通りの父が出ました。この出来事は夢だったのかと言われましたが、私は確信しています。あれは夢ではなかったのです。

関連記事

青蛙(フリー写真)

井守と青蛙

もう大分前のことになりますが、私は当時、金属加工の小さな工場を経営していて、折からの不況もありその経営に行き詰まっていました。 そしてお恥ずかしい話ですが、自殺を考えたのです。…

黒い物体

黒い物体

半年程前、海外旅行の帰りの飛行機で体験した話。 機内が消灯された後も、俺は時差があるので起きていようと思い、座席に備え付けのディスプレイで映画を観ていた。 ※ 3時間くらい経…

公園

不思議な再会

私は神楽と名乗ることにする。これは私がかつて霊能者として「神楽斎」と名乗っていたからだ。過去には雑誌にも紹介されたことがあるので、知っている人もいるかもしれない。私には幼い頃から「霊…

時空の狭間の少女

これは俺が保育園に通っていた時の話。 俺が住んでた町には第一から第三まで保育園があり、俺は第一保育園に通っていた。 ある夏の日、合同お遊戯会の劇の練習で第一保育園の園児が第…

ガラス越しの水族館

夢の水族館で

俺は、じいちゃんのことが大好きだった。 初孫だったこともあって、じいちゃんはとても可愛がってくれた。 おねだりが得意じゃなかった俺にも、いろいろな物を買ってくれたし、虫採…

年賀状をくれる人

高校生の時から今に至るまで、十年以上年賀状をくれる人がいる。 ありきたりな感じの干支の印刷に、差出人の名前(住所は書いてない)と、手書きで一言「彼氏と仲良くね!」とか「合格おめで…

田舎の風景

消えた時間

小さいころ、私は人と異なる一面を持っていました。 言葉や文字に対する理解は普通だったものの、人とのコミュニケーションに大きなギャップがありました。 目を合わせることはせず…

時空(フリー画像)

祖母のタイムスリップ体験

祖母が体験した不思議な話。 まだ終戦後のバラック住まいの頃、生活物資を買いに市へ出掛けたんだそうな。 所々にバラック小屋が建っているだけの道を歩いていた時、急に辺りの様子が…

黒ピグモン

深夜にひとりで残業をしていた時の話。 数年前の12月の週末、翌週までに納品しなければいけない仕事をこなす為に、ひとり事務所に残って残業していた。 気付けば深夜0時近く。連日…

思い出のテトリス

祖母が亡くなった時の話。 祖父母4人の中で一番若い人で一番大好きな人だったから、ショックで数日経ってもまだ思い出しては泣いてた。 ある日の夕方、自室のベッドで横になってやっ…