赤い吉祥寺

バス

私が小学6年生の時、吉祥寺にある塾に通っていました。隣の区からバスで通うのですが、ある日の出来事です。

バスに乗った私の目の前に、ピシッとしたスーツにハットを被ったスラリとした老人が立っていました。私は席を譲り、「どうぞ」と声をかけました。彼は感謝の笑みを返し、そこから会話が始まりました。彼は「君は優しいねー」と話し、私もその言葉に応じて話を続けました。

間もなく、終点の吉祥寺駅に着くころ、「マジシャンですか?」と私が尋ねると、老人は笑いながら「でもね、これならできるぞ」と答え、指を立てました。私がバスを降りると、突然赤い光が目に飛び込んできて、周囲の景色が全く異なるものに変わりました。誰もいない町、走る車もなく、乗ってきたバスも消えていました。世界は赤い色に染まっており、非現実的な光景が広がっていました。

恐怖で走り出した私は、吉祥寺駅前通りで誰もいないことに気づき、泣き崩れてしまいました。その時、再びその老人が現れ、「戻して!早く戻して!」と叫ぶ私に「ごめんね」と謝り、私の頭を撫でながら、「怖がるとは思わなかったよ。ごめんね」と何度も謝りました。

突然、周囲の喧騒が戻り、私は普通の風景の中で横断歩道にしゃがんでいました。周りには人だかりができており、私は変な目で見られていましたが、あの老人の姿はどこにもありませんでした。

この体験は今でも私の心に深く刻まれており、あの老人が一体何者だったのか、今でも時々考えることがあります。

関連記事

田舎の風景(フリー写真)

大きな馬

昭和50年前後の事です。 うちの祖父母が住んでいた家は、東京近郊の古い農家の家でした。農業は本職ではなく、借家でした。 敷地を円形に包むように1メートル程の高さの土が盛ら…

未来は書き換えられている

昔、高校受験の勉強で市販の問題集をやっていた時の話だ。 一通り回答した問題の答え合わせをやっていたのだが、一問だけ正解と解説を読んでも解らない問題があった。 何度計算しても…

玄関

マンデラ効果

これは私が中学生の頃、夏休みを目前に控えた、蒸し暑いある朝の出来事です。 朝食を終え、のんびりと準備を整えて玄関に向かいました。 スニーカーのつま先を土間にとんとんと叩き…

公園

誰も居ない通学路

20年近く前の話になります。当時、私は小学4年生でした。近所の公園には、変わったすり鉢状の滑り台があり、小学生には大人気でした。学校が終わると、そこで親友のT君と遊ぶ約束をしていまし…

赤い世界

赤い世界とマジシャンの老人

僕が小学6年生だったときのことです。 当時、僕は吉祥寺にある塾に通っていました。 自宅は隣の○○区にあり、毎回バスで吉祥寺まで通っていました。 その日も、いつものよ…

旅館

異次元の迷子

神奈川や静岡近辺のホテルや旅館、また会社の保養施設関連では、時空が歪んだかのような不可解な現象についての話が昔から存在しています。表現方法はさまざまですが、そのような体験をした人々の…

異界への扉

建築法だか何だかで、5階以上の建物にはエレベーターを設置しないといかんらしい。 だから俺が前住んでいた高速沿いのマンションにも、当然ながらエレベーターが一つあった。 6階に…

竹下通り

竹下通りの時間の谷間

5年前、当時の彼女と一緒に竹下通りでの買い物を楽しんでいました。 祭日の快晴の日で、若者で賑わう街中を歩いていた時、突然トイレに行きたくなりました。 しかし、店内にトイレ…

地下通路

裏世界へ続く道

夏の日の一件は、今でも私の心に鮮烈に刻まれている。 私が小学5年生の夏休み、近所の大きなグラウンドで昆虫のリストを作成していた際、地面に隠れている錆びついた鉄の扉を見つけた。 …

タイムスリップ(フリー素材)

時を隔てた憑依

最近ちょっと思い出した話がある。 霊媒体質の人には意識が入れ替わることがあるらしいけど、これは意識がタイムスリップして入れ替わったとしか思えない話。 ※ 数年前、ある人に連れ…