霊視

公開日: 怖い話

916151232370671

あるテレビ番組のディレクターが心霊番組の撮影をしていた。

母親、息子、娘の3人家族のインタビューカットから始まった。

彼らは目に涙を浮かべながら、父親の事を話してくれた。

その様子を見て、ディレクターは満足のいく映像が撮れそうだと感じた。

次に霊能者が登場して、父親が着ていた服から霊視をすることになっていた。

霊能者は服を握り締め、霊視を始めた。

長い沈黙…。

その沈黙は予定よりもずっと長く続いた。

何かあったのだろうか。

普段なら、流暢な話しぶりで有名な霊能者が、霊視に対して曖昧なコメントしかしない。

それもブツブツ呟いているだけで、様子がおかしい。

ディレクターはコメントをどうにか引き出そうと気の利く質問を投げかけたが、霊能者はしどろもどろになっていた。

スタッフもこの緊急事態にどうしていいか分からず、立ち尽くしたままだ。

「これでは番組が作れそうもない…。やばいことになったぞ」

ディレクターは半ばパニック状態になっていた。

帰りのマイクロバス内では、どんよりした空気が漂っていた。

ぐったりしているディレクターに、霊能者がゆっくり近づいてきて呟いた。

「惨殺されているよ」

ディレクターは驚きの表情を見せた。

さらに、霊能者は恐るべき発言をする。

「父親は惨殺されているよ、あの家族に」

「家族にだって!?」

「殺人者の前では話せないよ。家族が住んでいる家からそう遠くない裏山に埋められているよ」

関連記事

渦人形(長編)

高校の頃の話。 高校2年の夏休み、俺は部活の合宿で某県の山奥にある合宿所に行く事になった。 現地はかなり良い場所で、周囲には500~700メートルほど離れた場所に、観光地の…

ポコさん

私の住んでいた家の近くの公園には、いつもポコさんという大道芸人みたいなおじさんが週に3回来ていた。 顔は白粉か何かで白く塗り、眉毛は太く塗り、ピエロの様な格好でいつもニコニコして…

コンセント

最初に気付いたのは散らかった部屋を、僕の彼女が片付けてくれた時だった。 僕は物を片付けるのが苦手で、一人暮らしをしている狭いアパートはごみ袋やら、色々な小物で埋め尽くされていて、…

幽霊船

これは、もう亡くなった曾祖父に聞いたお話です。 曾祖父が亡くなる数ヶ月前、どうしたことか、親戚を集めて色々な話を聞かせてくれたのです。 私の実家は鹿児島県のとある離島なんで…

巨頭オ

巨頭オ ― 二度と訪れてはならない村

ある日、男はふと、かつて訪れた小さな村のことを思い出した。 それは数年前、一人旅の途中で立ち寄った、小さな旅館のある村だった。 静かで穏やかで、そしてなによりも、心のこも…

椅子(フリー写真)

三頭身

小さいながら夫婦で防犯設備の株式会社を立ち上げて8期程経ち、地方銀行の大型融資も審査が通って順調に利益を伸ばしている中で、専務取締役を任せていた嫁が事故死した。 それからは仕事に…

夜の町並み(フリー写真)

夜道のいざない

去年の7月くらいに体験した話。 うちの母方の祖父が亡くなり、通夜と葬式のため親の実家の北海道へ行きました。 当日は祖父を神社まで運び、その夜は従兄弟や叔父、叔母とみんなでそ…

心霊写真

心霊写真といっても色々とある。 光や顔が写り込んでいるもの。 体の一部が消えているもの。 体が変色しているもの…。 これらの写真はプロのカメラマンから見ると、レ…

渦人形

渦巻き人形事件ファイル

高校二年の夏休み。 私たち器械体操部は、某県の山奥にある公共合宿所へ四泊五日の強化合宿に向かった。 山道を抜けた先に建つ平屋は、周囲五百メートル以内にホテルとコンビニが一…

登校する小学生(フリー写真)

モウキカナイデネ

この話を誰かに話す時、 「確かにその話、滅茶苦茶怖いけど、本当かよ?」 と言われる事がある。 霊が出て来るような話の方が、余程現実味があるからだ。 これは俺が実…