お婆さんと地蔵堂

公開日: 怖い話

工場(フリー写真)

茨城県の常磐自動車道の、とあるインターチェンジを降りてすぐの工業団地にあった工場での話。

その工場は夜勤者の交代が夜中の2時で行われていて、2時で交代して帰る途中の派遣社員が、単独での自動車事故で死亡した。

派遣会社の営業が現場に花を供えに行くと、事故現場には既に小さな地蔵堂があって、近所に住むと思われるお婆さんが花と水をお供えしていた。

が、地蔵は古い。ずっと昔からあったように見える。

派遣社員の営業はお婆さんに挨拶して、ここであった事故について話を振ってみたそうな。

するとお婆さんが言うには、この場所は昔から交通死亡事故が多くて、事故死者の供養の為にこの地蔵堂が建てられた。

お婆さんは毎日毎朝この地蔵に水と、日によって花や団子や饅頭などをお供えするのを日課にしていた。

ただ先日、熱を出して頭痛も酷く、起き上がれずに一日寝ていた日があって、日課のお供えが出来ない日があった。

翌日何とか起きられたので、お地蔵さんにお供えしに行ったら、事故を起こした派遣社員の車を発見したそうな。

話の最後にお婆さんは、

「あたしのせいなのかねぇ……」

と語り、その時のお婆さんの悲しそうな気落ちした表情が忘れられないと、派遣社員の営業だった人は言っていた。

書き忘れたけど、地蔵堂が出来てからは死亡事故どころか普通の事故もパッタリと無くなっていた。

それなのに、たまたまお婆さんがお供え出来なかった日に何十年ぶりかの事故。

しかも死亡事故が起きたとの事で、本当にお婆さんは落ち込んでいたようだと営業の人は言っていた。

関連記事

ハサミ

ハサミ女

近所に「ハサミ女」と呼ばれる頭のおかしい女がいた。 30歳前後で、髪は長くボサボサ、いつも何かを呟きながら笑っている、この手の人間の雛形的な存在。 呼び名の通り常に裁ちバサ…

残されていたもの

かつて、地方のとある旅館に泊まった家族の娘が、トイレで惨殺されるという事件があった。 事件現場は凄惨を極めた。 全身は滅多刺しにされ、顔は個人の判別もできないほどに破壊され…

巨頭オ

巨頭オ ― 二度と訪れてはならない村

ある日、男はふと、かつて訪れた小さな村のことを思い出した。 それは数年前、一人旅の途中で立ち寄った、小さな旅館のある村だった。 静かで穏やかで、そしてなによりも、心のこも…

夜の町並み(フリー写真)

夜道のいざない

去年の7月くらいに体験した話。 うちの母方の祖父が亡くなり、通夜と葬式のため親の実家の北海道へ行きました。 当日は祖父を神社まで運び、その夜は従兄弟や叔父、叔母とみんなでそ…

階段(フリー写真)

ソマコ

学生の時に体験した話。 授業後にサークル仲間4人とクラブハウスでダベっていたのだが、夏だったせいかいつの間にか怪談話になっていた。 ただどれもこれも有り触れた持ちネタばかり…

神隠しに遭う子

神隠しに遭う子

小さな頃、私は「知的障碍があるのでは」と思われていました。 言葉や文字に遅れはなく、読み書きも問題はありませんでした。 しかし、人と目を合わせない、会話ができない、約束が…

花(フリー素材)

いっちゃん

妹の話。 妹が5歳、自分が7歳の時、伯父が遊びに来た。 伯父を見るなり妹は、 「がしゃーんがしゃーん、イタイイタイの伯父さん」 と言い出した。 伯父も両親…

窓

呪文を唱えなければ

自分は母方の血をひく霊感の強い親戚が多い中、父方の血が強く霊感はほとんど感じませんでした。そのため、怖い話の特集が載っている雑誌を枕元に置いて、寝る前に読むことも平気でした。 …

竹林(フリー写真)

有刺鉄線の向こう側

小学生の時の記憶。 私の育った町には昔、林があった。 ただその林は少し変わっていて、林の中に入って途中まで行くと、ある部分を境に突然竹林に変わっている部分があった。 …

郵便受け(フリー写真)

空き家に届く封筒

以前仕事で聞いたことを書いてみる。 あまり詳しく書くと職責に触れるので、結構改変するからフィクションとして見て欲しい。 ※ 郵便配達の仕事をしていた頃のある日、誰も居ない空き…