灯籠と火の玉

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

浮世絵のフリー素材

じいちゃんから聞いた話。

真夏の夕方、お使いの帰り道。お寺の片隅に人だかりが出来ているのを見つけた。

気になったじいちゃんは、人だかりが出来ている場所に行った。

人だかりが邪魔で何が起こっているのか判らないが、パァーンと乾いた音が何度も聞こえる。

じいちゃんはますます気になり、人だかりを掻き分けて一番前に行った。

そこには横倒しになった灯篭があった。

その灯篭の上に、大きな火の玉がユラユラ揺れている。

火の玉はユラユラ揺れながら、灯篭の先まで来ると一気に急降下した。

火の玉が灯篭の先にぶつかると、パァーンと乾いた音がした。

そして、またユラユラと舞い上がって行く。

大きな火の玉は、何度も同じ調子で灯篭の先にぶつかっていた。

灯篭の先には、既に大きなヒビが出来ている。

和尚さんは困った顔をしたまま立っていた。野次馬も檀家さんもオロオロするばかり。

じいちゃんは隣に居た野次馬のおじさんに尋ねた。

「あの火の玉、どうしたの?」

「うーん、火の玉の考えることなんて解らんよ」

野次馬のおじさんはため息混じりに答えた。

じいちゃんはお使いがあったので、早々にその場を退散した。だからその後、どうなったのかは判らない。

ただ今でも、そのお寺には大きなヒビの入った灯篭が一基、建っている。

関連記事

田所君

小学生のころ同級生だった田所君(仮名)の話。 田所君とは、小学5年から6年の夏休み明けまで同じクラスだった。田所君は、かなり勉強の出来るやつだった。 学校の図書館を「根城」…

灯篭流し(フリー写真)

灯籠流し

小学生の頃、よくH瀬村と言う山奥にある村に遊びに行っていました。 毎年夏になると、写真好きの父に連れられて村を訪れ、村外れにある川で泳ぐのを楽しみにしていました。 私が小…

古民家(フリー写真)

トシ子ちゃん

春というのは、若い人達にとっては希望に満ちた、新しい生命の息吹を感じる季節だろう。 しかし私くらいの年になると、何かざわざわと落ち着かない、それでいて妙に静かな眠りを誘う季節であ…

山道

途切れさせてはいけない

俺の嫁が学生の頃の話。 オカルト研究サークルに入っていた嫁の友達K子が、心霊スポットについての噂を仕入れて来た。 東北地方某県の山中に、周囲を注連縄で囲われている廃神社があ…

私はアリス

信じてもらえないかも知れない。 でも当人が一番混乱してるんだ。ちょっと長くなるけど聞いてくれないか。 家に帰ったら母親が風邪で寝込んでいた。甲斐甲斐しく世話をする俺。まあ、…

占い師

昔、姉夫婦と私と彼氏の4人で食事した帰りに『この悪魔!!!』って女性の叫び声が聞こえた。 声のする方向を見ると、路上で占いしてる女性が私に向かって指を差して『悪魔!!悪魔ああああ…

白猫(フリー写真)

先導する猫

小学生の頃、親戚の家に遊びに行ったら痩せてガリガリの子猫が庭にいた。 両親にせがんで家に連れて帰り、思い切り可愛がった。 猫は太って元気になり、小学生の私を途中まで迎えに来…

怪談ドライブ

もう十数年前、大学生だった私は、部活の夏合宿に出かけ、その帰り、大学の合宿施設の近くに実家のある先輩に誘われて、地元の花火大会を見学していた。 花火大会の後、会場近くの河原で買い…

秘密

小学四年生の時の話。 当時、俺は団地に住んでいた。団地と言っても地名が○○団地というだけで、貸家が集合している訳じゃなく、みんな一戸建てに住んでいるような所だった。 既に高…

着物を着た女性(フリー写真)

止まった腕時計

友達のお父さんが自分にしてくれた話。 彼には物心ついた頃から母親が居なかった。 母親は死んでしまったと、彼の父親に聞かされていた。 そして彼が7才の時、父親が新しい母…