未来のコンビニ
俺が6歳の時の話だ。その頃の俺は悪戯が大好きで、しょっちゅう親に叱られていた。
いつものように「こんな家出てってやるー」と泣きながら言い放ち、家を飛び出す。でも、いつも夕飯時には戻っていた。
ある日、またひどく怒られて、「もう家になんか帰るもんか」と思い立ち、夜遅くまで色々な所をウロウロしていた。その夜の月は異常に大きく、真っ赤に輝いていた。
さすがに寂しさと空腹が募ってきたので、家に帰ることにした。帰り道、いつもは更地だった場所に見覚えのない店が現れていた。その店はレンガ造りで、中は明るく照らされており、赤と緑の看板が掲げられていたが、人の姿は見えなかった。
怖くなって家に急いで帰り、家族にその話をしたが、「何言ってるんだお前?」と信じてもらえなかった。翌日、その更地を確かめに行ってみたが、やはり何もなかった。
※
それから十数年が経ち、親父の転勤で別の土地に引っ越した。大人になった俺は、仕事で昔住んでいた場所の近くに行く機会があった。仕事を切り上げ、懐かしさに浸りながら歩いていたとき、ふと小腹が空いたので新しくできたセブンイレブンに寄った。
店内で肉まんを食べながら、昔はコンビニなどなかったと思い返していると、ふとあの夜のことを思い出した。このセブンイレブンが建っている場所、それはまさに俺が不思議な店を見たあの更地だった。
あの時見たのは、ひょっとして未来のこのセブンイレブンだったのだろうか?タイムスリップなんてあるはずがないと思いながらも、何か不思議な縁を感じずにはいられなかった。