未来の夫

公開日: 怖い話

Pool_of_True_Divination

ある少女が、将来の結婚相手が分かると言う占いを実践してみることにした。

その占いとは、真夜中の0時、口に剃刀を咥え、水を張った洗面器の中を覗き込むと、そこに結婚相手の顔が映るというものだった。

彼女は、話に聞いた通り洗面器に水を張り、手元に剃刀を置いて時間が来るのを待った。

そして、真夜中の0時がやってきた。彼女は、剃刀を口に咥え、恐る恐る水鏡を覗き込んだ。

なんとそこには、確かに自分とは違う別の誰かの顔が浮かび上がってきている。

驚いた少女は思わず叫び声をあげてしまった。

それと同時に、口にしていた剃刀が洗面器の中に落ちてしまった。

すると、洗面器に張った水が、一瞬のうちに血のように真っ赤な色に染まった。

彼女は何がなんだか分からなくなり、頭から布団を被り、ガタガタと震えながら朝を迎えた。

朝になって洗面器の中を覗き込むと、普通の透明な水の底に剃刀が沈んでいるだけだった。

―それから数年後。

彼女はある男性と付き合うようになった。

話題が豊富で楽しく、性格も優しく、おまけに経済力もあった。

ひとつ、彼がいつも大きなマスクをしているところだけが気になったが、彼女はこの男性をどんどん好きになっていき、やがて結婚の約束をした。

そうなると、再び例のマスクの下が気になってくる。生涯の伴侶となる人の事は、よく知っておかなければならない。

彼女は、その下に何があろうと自分の気持ちが変わらない自信があった。

そんな彼女の気持ちに押され、男性もついに折れ、マスクを取って見せた。

そこには、鋭利な刃物でざっくりと切りつけられたような、見るも無残な古い傷跡が残っていた。

「ひどい。一体どうしてそんな傷が」

彼女は悲鳴にも似た疑問を男性にぶつけた。

すると男性が言った。

「お前にやられたんだよ」

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