同じ夢を見る

公開日: ほんのり怖い話 | 不思議な体験

抽象画(フリー素材)

小学校3年生の頃、夢の中でこれは夢だと気が付いた。

何度か経験していたので、自分の場合は首に力を入れるイメージをすると夢から覚められると知っていた。

しかしその時は何となく、もう少し夢の中で遊ぼうと思った。

立っていた場所はアスファルトの道の上で、夢の中をテクテクと歩き始めた。

暫く歩くとトラス構造の橋(柱を三角形に組んである橋)があった。

渡り終えたら景色が一変し、江戸時代の長屋のような所に着いた。

そこも通り過ぎようとしたら家が途切れ、コの字型に凹んでいる一画があった。

覗くと町人風の人達が20人ほど、半円形に並びこちらを見ていた。

その中心に、痩せていて長い髭を生やし、杖を持った爺さんが居た。

俺は何となくその爺さんに寄って行ったら、その爺さんも近寄って来て、

「覚めなくなってるじゃろ。これを持って行ってばらまけ」

と巾着袋を渡された。

ハッと気が付き、首に力を入れてみたが確かに目が覚めない。

焦り始めて袋の中を見ると、白色と金色が混ざった砂のようなものが入っていた。

それでも何となく夢から覚めたくない。

「早くばらまけ」

と爺さんに促されたが、焦りと、何故か夢から覚めたくない葛藤があった。

ちらりと右の方を見ると、自転車が置いてあることに気が付いた。

それに飛び乗って長屋から逃げ出した。

暫く自転車で走ると先が崖になっている場所に出て、そこに別に親しい訳でもない違うクラスの女の子(Sとします)が立っていた。

Sがニコニコ笑いながら

「早く撒いた方がいいよ」

と言ったので、しぶしぶ爺さんに貰った粉を袋から掴んで目の前に撒いたら、パッと目が覚めた。

起きると寝汗を掻いていて、夢がやたらリアルに感じられたのを覚えている。

Sとは高校の時に同じクラスになり、ちょいちょい喋るようになった。

男勝りだけど気さくな子で、クラスでは女の子のリーダー的な存在だった。

偶に夢のことを思い出したが、特別親しくなることもなく高校生活も終わり、俺は就職してSは短大生になった。

5、6年経った頃、高校のクラス会をやるというお知らせが来た。

行こうかどうしようか迷ったが、結局行くことにした。

会場にはSも居た。

思い出話に花が咲き、みんな元居た席から離れて思い思いの席に座り、肩を抱き合ったりどつき合ったりしていた。

ふと俺の前にSが座り、

「元気だった?」

と明るい調子で話し掛けて来る。

俺も軽い調子で応えて世間話を始めた。

お互いの話が途切れた時、Sが

「ちょっと変な話をしていい?」

と訊いて来た。

「いいよ。何?」

と俺が頷くと、

「私、小学校の頃、夢の中で夢って気付いてさ。

でも覚め方が解らなくて、夢の中を長い間歩いて泣きそうになってたら、知らない爺さんが出て来て『向こうに行け』って言われたの。

指を差す方に進んだら夢の中にアンタが出て来て、アンタが私の方に砂を撒いたら突然目が覚めたの。

あの夢、ほんとに印象に残ってるのよねえ」

一気に酔いが醒めた。

しかしこんな場所で俺の夢の話をして、色々と夢について話し合う気にもなれず、

「へえ。不思議な話やねえ」

と、よくある怖い話に相槌を打つような感じで応えた。

色々と軽口を叩いて話題を逸し、また別の世間話にずらして行った。

それからSとは会うことも無いが、今でもあの夢は何だったんだろうと思う時がある。

関連記事

抽象画(フリー素材)

夢が現実に

最近になって気付いた不思議な事。 俺は普段眠ってもあまり夢を見ない。というか実際は見ていても忘れているんだと思う。 でも、偶に夢を覚えていたりする。しかも覚えているやつに限…

白い影

当時、私は精神的に荒んでいて、よく大型バイクをかっ飛ばしたりしていました。 その日もバイクで走っていたのですが、広めの幹線道路は渋滞していました。 そこで、道の左端をすり抜…

公衆電話(フリー写真)

鳴り続ける公衆電話

小学生の時、先生が話してくれた不思議な体験。 先生は大学時代、陸上の長距離選手だった。 東北から上京し下宿生活を送っていたのだが、大学のグラウンドと下宿が離れていたため、町…

白猫(フリー写真)

先導する猫

小学生の頃、親戚の家に遊びに行ったら痩せてガリガリの子猫が庭にいた。 両親にせがんで家に連れて帰り、思い切り可愛がった。 猫は太って元気になり、小学生の私を途中まで迎えに来…

車に乗った白い霊

私が学生の時に、実際に体験した話です。 その当時付き合っていたある女友達は、ちょっと不思議な人でした。 弟さんが亡くなっているんですが、彼女の家に遊びに行くと、どこからかマ…

モデルカー(フリー写真)

形見分け

俺はとある物のコレクターなのだが、コレクター友達であるAがある時突然、余命宣告を受けるような大病に罹ってしまった。 もう手の施しようがないレベルで、元気に動いているのが不思議な状…

父親の不思議な体験

うちの父親の話。幼少の頃から不思議な体験が多いらしい。 ※ 不思議な体験 - 其の一 60歳近いけど昔から魚釣りが趣味で、小さい頃に兄と幅50メートルくらいの川に釣りに出掛け…

和室

死守り

俺のじじいは柔道五段、がっしりした体格で、土と汗の臭いのするでかい背中。日に焼けた顔。 俺がろくでもないことをする度にぶっ飛ばされた、荒れた手。 素直じゃなくて憎まれ口ばか…

灯篭流し(フリー写真)

灯籠流し

小学生の頃、よくH瀬村と言う山奥にある村に遊びに行っていました。 毎年夏になると、写真好きの父に連れられて村を訪れ、村外れにある川で泳ぐのを楽しみにしていました。 私が小…

田舎の夜(フリー写真)

田舎の不思議な行事

これは今から約15年前、南伊豆の小さな村で私が実際に体験した、怖いと言うより少し不思議な話です。 小学3年生の夏。私たち家族(父・母・私)は、お盆休みを伊豆のK村という場所で過…