アカマネ
本で読んで以来、アカマネという得体の知れない物の怪の話を集めている。
アカマネとは、読んで字のごとく「赤真似」。これが全国津々浦々で目撃されているらしい。
俺が覚えているアカマネの話は、大体以下のような話。
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ある人が引っ越して間もない頃の昼間、チャイムが鳴った。
引っ越してきたばかりで知り合いもなく、訪ねて来る人の心当たりもなかった。
厄介なセールスだと困るので、ドアスコープから様子を伺うと、誰も居ない。
『おかしいな……』と思いながらも部屋に戻ると、また「ピンポーン」とチャイムが鳴る。
再びドアスコープを覗いても誰も居ない。そして部屋に戻ると、また「ピンポーン」とチャイムが鳴る。
『そうだ』と思い立ち、玄関が見える部屋に行き、カーテンを開けて玄関を覗き見た。
ドアの前に立っていたのは、真っ赤な色をした人型のものだったという。
『うわ』と思ってすぐに顔を引っ込めたが、その時また「ピンポーン……」とチャイムが鳴った。
『一体あれはなんなんだ?』と思うと、怖くてたまらない。チャイムが鳴る度に体が竦んだと言う。
『あんなものに気付かれたらどうしよう』そう思って子供部屋を出て、絶句した。
玄関の上にある採光用の窓に、赤い頭と手が張り付いていたのだという。
しかも身長が二メートル以上ある!
『どうしよう』と思った瞬間、外に出ていた娘さんが帰宅した。
驚いて「大丈夫だった?」と聞くと、「何が?」と笑われたという。
※
数日後、友人夫婦が引っ越し祝いに来てくれた。
玄関に行ってみると、旦那さん一人しかいない。「奥さんは?」と聞くと、旦那さんは「わからん」と首をかしげた。
「俺をマンションの下に降ろしたら、慌てて自分だけ帰ってしまった」と言って怪訝な顔をしたという。
やがて、宴もたけなわとなった。やっぱり奥さんに来て欲しいその人は、奥さんに電話してみた。
すると、奥さんは「言いにくいんだけど……」と前置きして、こんなことを言った。
「マンションに行くと、マンションの五階にあるあなたの部屋の前に、大きくて真っ赤な人間がいて、体をくの字に曲げて中を覗き込んでるの。主人には見えなかったみたいだけど、私は怖くて帰っちゃったの」
このことを知人に相談すると「火事の前兆かもしれない」と言われたので、しばらく火元に気を付けて生活した。
しかし、結局火事は起こらず、その赤い人間がまた現れることはなかった。
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俺が集めたこの「赤真似」の特徴は以下のようなものだ。
・体が赤い。稀に緑色、ないし黄色の場合もある。洒落怖の「青い人が来る」などもこの類か。
・アカマネとは単に一番オーソドックスな色なだけで、別に赤い種類だけがいるわけではないのかもしれない。
・体が巨大である、もしくは目鼻などの凹凸がないなど、人間とは少し異なるものの、人型をしている。
・神出鬼没で、特定の場所に出るというわけではない。取り憑くということもいまだ聞かない。
・何かの前兆であるとも聞く。その場合は火事の前兆であると解釈される場合が多い。
・稀に知り合いの名前を騙って玄関に現れることもあるらしい。アカマネの名前はこの特徴から。
・見える人と見えない人がきっぱりと分かれるらしい。
ネットの情報や本を読む限り、色々なところで結構目撃されてるようだ。
もし知っている人がいたら教えて欲しい。