一緒に遊ぼうよ
高校生の頃、彼女と近くの公園で話していたら、5、6歳くらいの男の子が「遊ぼうよー」と言ってきた。
もう夜の20時くらいだったから、「もう暗いから早く帰んなくちゃダメだよ」と彼女が言ったら号泣。
仕方がないから30分くらいブランコしたり鬼ごっこしたりして遊んであげた。
その間、その男の子はテンション上がりっぱなし。
「もう遅いから」と言っても聞かないから、「お兄ちゃんたちはこれから勉強しに行かなくちゃいけないんだ。もう暗いしお家まで送って行くよ」と言った。
それでも「まだ遊ぶ!一緒に遊ぼうよ!」と押し問答。
あまりにしつこいので、「勉強しないとお母さんに怒られちゃうから」と言い、強引にその公園を後にした。
※
その後、彼女と他の公園で話そうかという事になり、自転車に乗って移動。
1時間くらい経った頃かな? 話したりジュースを飲んだり純情高校生のデートをしていたら、また男の子が来た。補助輪付きのチャリで。
「もうお勉強終わったの? 一緒に遊ぼうよ」
おいおい、もう22時くらいだぞ…。小さな子が一人ぼっちで遊ぶ時間か?
しかもさっきの公園からここまでかなり遠いし。
俺は思い切り引いていたけど、彼女が「もうちょっとだけ遊んであげようよ」と言うから、またまた鬼ごっこしてあげた。
そしたら急に蹲って、「何すんの!何すんの!」と喚き出した。
「どうしたの?」と聞いても返事してくれないし、瞳孔は開き切って目が座っているし。
『逃げねぇ?』と彼女とアイコンタクトしていたら、男の子が急に復活。
「お腹空いちゃったからもう帰るね」と笑顔で言う。
続けて「お兄ちゃんたち優しいから宝物あげる」と言い、機関車トーマスの絵が描いてあるポケットティッシュをくれた。
そして補助輪付きチャリに乗り、猛ダッシュで帰って行った。
小さな子の目が座った表情って本当に異様だったし、普通じゃない空気も感じ取っていたから、帰り道にあったゴミ捨て場に捨てて来ちゃった。ごめん。
※
でも、話はそこで終わらないんだ。
家に帰ってリュックの中から物を出していたら、リュックのポケットに機関車トーマスのティッシュが。
彼女の悪戯だろうと思い、「マジ冗談キツイよ」とベルを入れたら「何が?」と返ってきた。
電話で聞いてみても「そんな事する訳ないじゃん!」と言う。
そりゃそうだよな。俺より男の子にビビっていたし、ティッシュに触ろうともしていなかったし。
もう10年くらい前の話だけど、今だに補助輪付きのチャリを見るとあの出来事を思い出すよ。