一緒に遊ぼうよ

夜の公園(フリー素材)

高校生の頃、彼女と近くの公園で話していたら、5、6歳くらいの男の子が「遊ぼうよー」と言ってきた。

もう夜の20時くらいだったから、「もう暗いから早く帰んなくちゃダメだよ」と彼女が言ったら号泣。

仕方がないから30分くらいブランコしたり鬼ごっこしたりして遊んであげた。

その間、その男の子はテンション上がりっぱなし。

「もう遅いから」と言っても聞かないから、「お兄ちゃんたちはこれから勉強しに行かなくちゃいけないんだ。もう暗いしお家まで送って行くよ」と言った。

それでも「まだ遊ぶ!一緒に遊ぼうよ!」と押し問答。

あまりにしつこいので、「勉強しないとお母さんに怒られちゃうから」と言い、強引にその公園を後にした。

その後、彼女と他の公園で話そうかという事になり、自転車に乗って移動。

1時間くらい経った頃かな? 話したりジュースを飲んだり純情高校生のデートをしていたら、また男の子が来た。補助輪付きのチャリで。

「もうお勉強終わったの? 一緒に遊ぼうよ」

おいおい、もう22時くらいだぞ…。小さな子が一人ぼっちで遊ぶ時間か?

しかもさっきの公園からここまでかなり遠いし。

俺は思い切り引いていたけど、彼女が「もうちょっとだけ遊んであげようよ」と言うから、またまた鬼ごっこしてあげた。

そしたら急に蹲って、「何すんの!何すんの!」と喚き出した。

「どうしたの?」と聞いても返事してくれないし、瞳孔は開き切って目が座っているし。

『逃げねぇ?』と彼女とアイコンタクトしていたら、男の子が急に復活。

「お腹空いちゃったからもう帰るね」と笑顔で言う。

続けて「お兄ちゃんたち優しいから宝物あげる」と言い、機関車トーマスの絵が描いてあるポケットティッシュをくれた。

そして補助輪付きチャリに乗り、猛ダッシュで帰って行った。

小さな子の目が座った表情って本当に異様だったし、普通じゃない空気も感じ取っていたから、帰り道にあったゴミ捨て場に捨てて来ちゃった。ごめん。

でも、話はそこで終わらないんだ。

家に帰ってリュックの中から物を出していたら、リュックのポケットに機関車トーマスのティッシュが。

彼女の悪戯だろうと思い、「マジ冗談キツイよ」とベルを入れたら「何が?」と返ってきた。

電話で聞いてみても「そんな事する訳ないじゃん!」と言う。

そりゃそうだよな。俺より男の子にビビっていたし、ティッシュに触ろうともしていなかったし。

もう10年くらい前の話だけど、今だに補助輪付きのチャリを見るとあの出来事を思い出すよ。

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