祖母が体験した不思議な話。
まだ終戦後のバラック住まいの頃、生活物資を買いに市へ出掛けたんだそうな。
所々にバラック小屋が建っているだけの道を歩いていた時、急に辺りの様子がおかしくなった。
いつの間にか周りには建物が沢山建っていて、目の前には巨大な駅があった。
そして駅から、白くて煙突も無く流線型の、見たこともない形の汽車が出て来た。
唖然として眺めている内、気付いたら元の道に居たそうだ。
後に新幹線が登場した時、あの時に見たのはあれだったんだ…と思ったそうだ。
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月日は流れ、大阪万博があったくらいの時。
用があって東京に来ていた祖母は、街を歩いていたらしい。
ふとした時に躓いてしまい、頭を上げると街の様子が変わっていた。
人々も変わった格好をしていて、手にトランシーバーのような妙な機械を持っていた。
訳が解らなくなって、目を瞑って深呼吸をした後、もう一度目を開けると元に戻っていたらしい。
結局、その妙な機械は後の携帯電話だったようだ。
※
それから祖母はもう一度だけ、その時間旅行を体験したらしい。
今度は夜に散歩していた時、どう歩いたのか知らない内に、物凄く広い場所に出たらしい。
そこは巨大な施設のようで、様々なビルのようなものや機械があった。
その中心には機械や装置のようなものから出来た、物凄く高いタワーがあったらしい。
上は果てしなく天まで伸びていて、一定間隔でライトのようなものが付いていた。
それを暫く見た後、元来た道を戻ったが、二度とそんな施設は見つけられなかった。
その話の塔は、どうも話の内容からして軌道エレベーターなのではないかと思う。
もちろん祖母は軌道エレベーターなど知らない。
今まで見てきたものから考えると、祖母は近未来を見たのだろうか。
それ以降タイムスリップはしていないようだが、祖母が見たのは幻覚なのか未来なのかは分からないままだ。