一年前から一人暮らしを始めて以来、不眠症が酷くなった。
数ヶ月前に姉が遊びに来て、「へー…ここ住んでるんだ。そうかそうかなるほどね」と変な言葉を残して帰って行った。
霊とか一度も口にした事がない姉だけど、この人はとにかく勘が鋭い。
じゃんけんで姉に勝った事がないし、誰か来るとか親戚が亡くなるとかよく当たる。
怖いなと思ったのは、電車に乗っている最中に電話がかかってきて『電車降りて。今すぐ話をしたいの』と言われ降りたところ、どうでも良い話に数十分付き合わされ内心腹を立てていたら、目的地でかなり大きな事故が起きていた。
聞いても「別に」で他に何も話さない人だけど、勘の鋭さは半端ない。
その姉が「なるほどね」と言ったから少し引っかかっていた。
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数日後、姉から人形が送られてきた。
「何これ?」と電話をしてみたら、『とりあえず枕元に置いて寝てみて』とだけしか言わない。
姉と違って人形趣味がないから、何だかなあと思いながら枕元に置いて寝たら、その日から物凄くよく眠れるように。
姉に「何かすごく良く眠れるんだけど、何あれ?」と聞いたけど、『そうか、良かったね。それはあげるよ』と言うだけでやはり何も言わない。
それ以来、枕元にその人形がいるんだけど、毎日見ているうちに何だか情が湧いてきて、服なんかを買って着せ替えている。
他の人形を見ても特に可愛いと思えないから、本当に人形者になったとは言えないんだけど、その人形は可愛くて仕方ない。
姉は相変わらずあまり何も言わないけど、やはり何かあった気がして怖い。
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後日談 – 1 –
連休中に姉が遊びに来たのだけど、お土産に人形用のピンクの靴を持ってきてくれた。
実は、少し前にピンクの洋服を初めて自分で縫ってみて、可愛いけど靴だけ合わない。
どこかに売っていないかなと思っていたから驚いた。
あと、隣の部屋に6人家族がいて凄く煩かったんだけど、姉は来るなり「もうすぐ引っ越すよ」と言っていた。
すると連休最終日の夜、いきなりいなくなっていた。どうも夜逃げらしい。
相変わらず謎の多い人だと思う。
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後日談 – 2 –
あれから他の人形に興味が湧く事はないけど、姉からもらった人形はとても可愛がっている。
今回お正月と言う事で、見よう見まねで一生懸命着物を作って着せてみた。
可愛かったから着物を着せた人形を持って帰省したら、「はいこれ」とちりめんの人形用草履をくれた。
草履まで間に合わなかったから、靴のままだったんだ。
着物を作った事は一切言ってないのに、何で分かるんだろう…。
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後日談 – 3 –
姉に突然「鞄の中にあるぬいぐるみ出して」と言われ、思い当たる節がないので何だろうと思っていたら、友人からゲーセンで貰ったぬいぐるみストラップだった。
「これはこっちで処分するから」と言われて、有無を言わせず持って行かれた。
こういう時は何か理由があると解っているし、聞いても答えないのでそのまま預けて帰ったけど、昨日彼氏の二股が判明。
相手はそのストラップをくれた友人だった。
気が付かなかった自分の馬鹿さ加減に腹が立って、物凄く落ち込んでいるけど、姉があのストラップに何を見たかの方が気になって仕方ない。