専門学生の頃に深夜専門でコンビニのアルバイトをしていた時の話。
ある日の午前1時頃に駐車場の掃除をしていると、道路を挟んだ向こう側の方から何か乾いた物を引き摺るような、
「カラカラカラ」
という音が聞こえてきたんだよ。
最初は『こんな時間に酔っ払いが木の枝でも引き摺って歩いてんのかな?』と軽い感じで捉えていたんだが、通り過ぎて行ったと思ったらまた戻って来てという風に、往復を繰り返している事に気付いたんだよ。
しかも移動スピードが徐々に加速していて、明らかに有り得ない速度で移動している。
流石に気持ち悪いなと思ったんだが、勤務時間はその日は午前3時までだったから、駐車場掃除はそこそこにして店内に戻ってバイトを続けていた。
※
それで、勤務時間も終わって午前3時に店を出たんだけど、その時には音も止んでいたので、気のせいだと思い自転車に乗って帰ることにしたんだ。
でも、少し店を離れた辺りからまた、
「カラカラカラ」
という音が聞こえて来た。俺の後ろから。
びびって少し早目に自転車を漕ぐが、音は明らかに俺に付いて来ている。
俺の家はバイト先の店から10分程しか離れていないから、ここは寧ろ焦って行動した方が危険だと思い、慎重に自転車を漕いで行く。
音は俺から10メートル以上は離れているが、ぴったりと付いて来る。
家の近くの所まで来て、あと角を三つ曲がったらすぐに家に着くという距離まで来た時、一つ目の角を曲がった途端、音は急に俺の真後ろまで接近した。
「カラカラカラ」という音が「ガラガラガラ」と大きく背後で鳴り響いた時は、流石に全身から鳥肌が立った。
緊張はピークにまで達していたけど、もう家まであと少しという所まで迫っていたから、振り返りたい気持ちを必死で堪え、とにかく自転車を漕ぎ続けた。
家の門が見えた時には、すぐさま飛び込んだ。
家まで着いたという安心感か、びびりながら振り向いた先には、拍子抜けだろうが何も居なかった。
※
その次の朝には家族に深夜にあった事を話して笑われた。
しかし、その日の内に俺は自転車でこけて左ひざの靭帯が切れる怪我を負ってしまった。
幸い切れたのは後十字靭帯で、滅茶苦茶痛かったが歩けたので、家族とその日の内に御祓いに行ったよ。
母からは「妖怪カラコロ」と変な名前を付けられたそれは、家族の間で暫く茶の間を賑わす話題になっていた(俺が怪我したのに)。
※
それから4年程経った去年の事なんだが、兄(長男)から唐突にこんな話をされた。
「あの当時さ、お前には言えなかった事があるんだけど、実はその音は俺も聞いてるんだよね。
大分昔なんだけど次男(これも兄)にさ、『何か気持ち悪い音が聞こえるから一緒に聞いてくんない?』って言われて、一緒に部屋で外の音を聞いていたら、確かにお前が言っていたような音が聞こえて、二人して気持ち悪いなって話してたんだわ」
「ちょ、言えよ!」
「だって、うちの周りで聞こえてたんだぞ。そんなこと言ったら余計びびらすだけだと思って言えなかった」
随分前からうちを狙ってたみたいです。
ちなみに今でも一年に一回くらいは聞こえます。