休日の夕方に友人連れ3人で、温泉宿に向かう山道を車で走っていた。
車の持主が運転、もう一人は後部座席、俺が地図を見ていた。
地図上では一本道で、トンネルを3つ通らないといけなくて、2つ目まで何の疑問もなく通り過ぎた。
そして「あとトンネル一つ」と俺が言ったら、トンネルの手前に集落が左手に見え、広場で祭が行われてるように見えた。
今思えば、窓も閉め切ってたのに太鼓や人の声が異様な程大きく聞こえた気がするが、温泉宿はもう近いしと思い、祭に寄ってみることにした。
集落に向かう道は細く、田んぼの中を通って、すぐさま祭が行われてた広場に着いた。
すると、さっきまで祭囃子が聞こえていたのに人っ子一人見当たらず、音もいつの間にか消えていた。
そして、まるで長い間放置されたかのような祭のセットだけが佇んでいた。
その時点でかなり寒気がして、足早に立ち去ることにした。
車の中では「あれなんだったんだろ、ちょっと怖いよな」って話をしながら車は本来のルートに戻り、『開○○トンネル』という3つ目のトンネルを通り抜けた。
この時の風景はセピア色で、今でも頭に焼き付いている。
運転手が酷く怯えた声で、「ここ、さっき通ったよな?」と言った。
俺にも後部座席の友達にも、確かに見覚えがあった。
それでも車を進めて行くと、さっき通った筈の集落の祭が見えてきた。祭囃子も聞こえてきた。
俺たちは口々に、「道を間違えたんだろう」とか「地図が間違ってる」とか言い合いになった。
だが結局、地図の通りだと大きい道は一本道だし、進むしかないから車を進めて行った。
※
再びトンネルを抜けたが、また同じ風景だった。
流石に尋常じゃないから、俺たちはほぼ無言になり、一旦車を停め外に出た。
そして、トンネルの反対側からトンネルの名前を確かめた。
『開○○トンネル』となっていた。
俺たちはどうすることもできないから、一旦戻ることに決めた。
トンネルを戻ると、何故か右側にある筈の集落が無く、祭も無かった。
そして正面からトンネルの名前を確かめると、『開○○トンネル』となっていた。
俺たちはやはり無言で再び車に乗り込み、そのトンネルを通った。
すると、さっきまでとは違う開けた風景が目の前に広がり、俺たちは安堵し温泉宿へ向かった。
その後、俺たちは不幸に見舞われたなどの出来事はないが、俺はそれ以降その2人とは疎遠になってしまった。