旦那の祖父が危篤の時の話。
連絡を受けて私と旦那、2歳の息子とで病院に向かった。もう親戚の人も来ていて、明日の朝までがヤマらしい。
息子はまだ小さいので病室にずっと居る訳にもいかず、もう夜で他の患者も居ないので一階のロビーで待機していた。
普段20時には寝る息子も普段と違う雰囲気が嬉しいのか、21時を過ぎても眠そうな気配が無い。楽しそうにしていた。
※
21時を回って、そろそろ夜も遅いし当番で義祖父に付き添うことにして、今日はもう帰ろうという話になってきた。
その時、息子が突然、
「じいちゃん!じいちゃん!」
と叫び始めた。
『病室に居る旦那の父のことかな?』と思ったので、
「じいちゃんは上で用があるから待ってようか」
と言っても、エレベーターまで行って
「じいちゃん!じいちゃん!」
と叫ぶ。
旦那が「連れて行こうか」と言うので、じいちゃんの居る病室へみんなで行った。
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ところが旦那の父ではなく危篤の義祖父を指差し、
「じいちゃん!じいちゃん!」
と言うので、ああこっちのじいちゃんのことかと納得した。
「じいちゃんね、今ねんねしてるの。今日はもう遅いし、バイバイして帰ろうか」
と私が言い、息子が
「じいちゃんバイバイ」
と言ったその瞬間、義祖父の呼吸がおかしくなり、そのまま亡くなってしまった。
「じいちゃんは最後に○○(息子)に会いたくて呼んだんだねえ」
と、みんな口を揃えて言った。
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その後、義祖父を家に連れて帰るためそのままみんな待っていだが、私と息子だけ先に車に戻っていた。
私は亡くなったことを実家の母に電話した。
ついでに息子も電話口に出させ、
「ばあちゃん会いたい」「ばあちゃん好き」
などと話していた。
その時、急に
「じいちゃん!」
と叫び出した(父は亡くなっていない)。
「じいちゃんじゃなくてばあちゃんでしょ」
と私が言っても、
「じいちゃんじいちゃん」
と嬉しそうな様子で話す。
電話を切っても、
「じいちゃんじいちゃん」
と繰り返す。
「じいちゃんどこにいるの?」
「あっち」
と病院を指差す。
「お母さんはじいちゃんがどこにいるかわからないから、○○君連れて行って」
※
そして車を降りると一目散に病院へ。
エレベーターの前で
「じいちゃん下!じいちゃん下!」
と言う。
私はまだ病室に居ると思っていたのだけど、取り敢えず地下のボタンを押し下に行く。
地下は一般に使われてないようで、目の前が壁で道が左右に分かれており、看板も無い所だった。
「じいちゃんあっち!じいちゃんあっち!」
と、息子が指差す方に行く。
何度も角を曲がって辿り着いた突き当たりに、親戚の人が集まっていた。
「あれー? みんなこんな所で何してるの?」
と言ったのと、状況を理解したのが同時だった。
みんなで義祖父を送り出すところだった。
「△△(私)なんでこんなとこに居るの?」
と言う旦那に事の顛末を話した。
一緒に見送りに来ていた医者と看護婦が、恐ろしいものを見るような目で息子を見た。
しかし親戚の人は、
「おじいさんはほんとに○○が好きで、見送ってほしかったんだねえ」
とほのぼのしていた。
※
その後、家に着いてから義祖父の亡骸を見て息子が「じいちゃん」と言う事は一度も無かった。
「じいちゃんどこ?」
と聞いてもしらっとして、解らない顔をしたり義父を指差したり。
子供というのは人間の身体を見ているのではなく、その中の魂を見ているのではないだろうか。
そして、その魂は死んで割とすぐ身体から離れてしまうのではないか。
私が死んでその死体を見ても、息子は「ママ」とは言ってくれないだろうなと、色々考える一日でした。