私は都心に位置する名門の高校を卒業したのですが、担任の安藤先生は非常に特異なキャラクターの持ち主で、その独特な生活指導で多くの生徒たちを魅了していました。
彼の人柄は質実剛健でありながらも、時折織り込まれる彼独自のユーモアが印象的でした。
高3の頃、当時の学年でオカルトが流行していて、特に金縛りが多発していたことを覚えています。
そんな中、安藤先生はある日の学年集会で、
「多くの霊現象は気のせいだ。金縛りになった時は、私の顔を思い浮かべること。きっとその恐怖は消えるだろう。」
と、明るいトーンで発言しました。
この発言には生徒たちは大爆笑し、他の教員も和んでいました。
安藤先生もその場を楽しんでいたように見えました。
数年が経ち、私たちは社会人として各々の道を歩んでいましたが、20歳を迎えることを機に同窓会を開くこととなりました。
自然とその時の思い出として、金縛りの話が挙がり、
「安藤先生のアドバイス通り、先生の顔を思い浮かべたら、驚くことに金縛りが解けたんですよ。」
という声が複数上がりました。
それに対し、今まで明るかった安藤先生の顔色が一変し、
「実は、その金縛り…ほとんどは気のせいだと言っているが、中には本当に霊的なものもあるんだ。」
と、深刻な顔で語り始めました。
集まった皆が驚きの表情を浮かべる中、元クラス委員長が勇気を出して尋ねました。
「先生、具体的にどのようなことが起きるんですか?」
安藤先生は少し考え込んだ後、
「テレビやカーステレオから奇妙な音が聞こえることや、家の揺れる感覚、未知の物音…特に印象的だったのは、夜中に天井裏で足音や物を引きずる音がしたことだ。」
と打ち明けました。
私たち一同は驚きの声を上げました。
すると安藤先生は笑顔で、
「しかし、そういった時は自分の気合でその現象を乗り越えてきた。気合だけが人生の武器だ!」
と、力強く語りました。
この日の同窓会での安藤先生の告白は、私たちの中で伝説となりました。
私自身も今でも、夜中に不安を感じるときや金縛りにあった時、安藤先生の顔を思い浮かべ、その力に助けられています。
安藤先生のアドバイスは、卒業してからも私の心の支えとなっています。
先生、いつもありがとうございます。