不思議な体験や洒落にならない怖い話まとめ – ミステリー

8時半の電話

電話機

私の会社に毎朝、電話がかかって来る。

それも朝の8時半、ぴったりに鳴る。

入社したてで電話番をしていた頃は律儀に電話に出ていた。

しかし電話に出ても何も言わず、暫くして切れる。

一週間続いたので気味が悪くなり先輩に聞いてみると、前からその電話がかかって来ているらしく、今では誰も取らなくなってしまったと言う。

確かに会社の始業時刻は9時だから、30分も前にかかって来る電話は取らなくても良いだろう。

ある日、仕事の関係でその位の時間に電話がかかって来る予定があったので、8時半の電話に出てしまった。

その電話は仕事の電話ではなく、いつもの無言電話だった。

しかしその日は少しだけ違い、テレビの音などの生活音が聞こえた。

次の日、呼びかけてみることにした。

「もしもし、番号をお間違えではないですか?」

そう言ったら切れた。

次の日、またかかって来た。

ただいつもと違うのは、普段は放って置けばいつしか切れてしまうのだが、その日はいつまで経っても切れなかった。

仕方がないので電話に出ると、男性の声で

「こちらはどこの番号ですか?」

と言われた。

警察だった。

事情を聞くと、首吊り自殺をした男性の遺書に

「あいつに裏切られた。あいつを殺して俺も死ぬ」

と書いてあったらしい。

警察としても『あいつ』を探しているとのことだった。

彼の部屋の電話帳に唯一載っていた番号がこの番号だったので、確認のためにかけたとのことだったが、会社の誰も自殺した彼のことを知らない。

もしかしたら、ずっと前に退職した人の関係者なのかもしれない。そういうことになった。

しかし、番号間違いを指摘した女性が一週間後に自殺した。

『裏切りを働いたと思ったのは自分の言葉からなのでは』

『自分の言葉が彼を殺したのでは』

という考えに耐えられなくなった、と遺書には記してあった。

相手は違えど、彼は『あいつ』を連れて行ったのだ。

私の会社で起こった話です。

モバイルバージョンを終了