小学2年生くらいまで、空中を漂う金色の金魚みたいなものが見えていた。
基本的には姉ちゃんの周りをふわふわしているのだけど、飼っていた犬の頭でくつろいだり、俺のお菓子を横取りしたりしていた。
家の中を好き勝手にうろちょろしていたから、きっとうちで飼っているペットか何かで、姉ちゃんに懐いているのだろうと思っていた。
※
「今になって考えるとおかしいよな。変なもん見えてたんだな」
という話を、大学生の兄ちゃんが里帰りして来た時に話した。
兄ちゃん(姉ちゃんから見ると弟)は、
「お前、高校生にもなって何言ってんの?」
と言っていたのだけど、姉ちゃんは
「何であんたにも見えるの?」
と言い出した。
実は姉ちゃんも、小学2年生の夏までその金魚が見えていたらしい。
だけど俺が生まれる少し前に見えなくなったので、
『あれは新しく生まれて来る弟の魂だったんだ!』
と思っていたらしい。
それなのに俺が生まれてからも金魚が居たことが判り、驚いたらしい。
「友達だと思って楽しく話していた人が、実は全然違う人だったと発覚した時の気分に似ている」
などと言い出して吹いた。
そんな体験したことねーよ(笑)。
※
しかし、あの金魚みたいなものは何だったんだろう?
姉ちゃんはまだ家に居るのではないかと、時々キョロキョロしている。
見えない癖に何してんだよ(笑)。
姉ちゃんが言うには、あの金魚みたいものは『ショーベタ』という熱帯魚に似ているらしい。
あと、寝返りを打った犬に潰されても平気そうにしていたのが不思議だった。普通ならぺちゃんこだよな。
触った感じはグミみたいだったけど、ぐにぐにしたら嫌がって逃げていたなあ…。