去年の暮れ、私が勤める編集プロダクションに一通の手紙が届きました。私宛ての名指しの手紙で、エッセイの添削と執筆指導を求める内容でした。
初めての事態に不信感を抱きながらも、返信をしました。持ち込みでの添削は可能だが、個別の指導は難しいと伝えました。
翌日、宅配便の担当者から、宛先に該当する人がいないとの連絡がありました。詳しく聞いてみると、その宛先は北関東の刑務所でした。差出人の名前で検索すると、傷害事件で逮捕された男の名前が出てきました。
封筒を見ると、差出人の住所が異なり、使用されたペンも異なっていました。封筒に書かれた住所に再度返信をしましたが、恐怖も感じていました。
数日後、返信が届きました。差出人からは、3年も家に戻っておらず、捜索願を出しているとのこと。刑期を調べた限りでは、出所は去年の夏のはずでした。
返信用封筒の住所に電話をかけてみることにしました。電話に出た年配の女性は、彼女の息子が暴力事件に関与したとは考えられないと言いました。
息子は大人しく、家に篭りっきりで、3年前にいなくなったとのこと。部屋には小説などは見つからず、警察に捜索願を出していたそうです。
その女性の家を訪れた時、彼女は息子の部屋を押入れの天井裏として指摘しました。天井裏には彼の物があり、息子の手紙を見せた時、彼女はそれが息子の筆跡であると確認しました。
彼女は息子が中学3年の時にいじめに遭い、家に篭りがちになったと話しました。しかし、彼が文筆活動をしていたかどうかははっきりしませんでした。
不可解な手紙、失踪した息子、そして謎の女性。真相は依然として不明なままです。私は仕事で名前を出すことが多いので、この一件は非常に不気味に感じています。