これは、私が保育園に通っていた頃の話です。
私が住んでいた町には「第一保育園」から「第三保育園」まであり、私は「第一保育園」に通っていました。
ある夏の日、合同でお遊戯会の劇の練習を行うため、「第一保育園」の園児が「第二保育園」に行くことになりました。この「第二保育園」の園舎はCの字型をしており、遊戯室はその一端に位置しています。
遊戯の練習が終わり、私を含む園児たちは昼食を取るため、反対側の端にある教室へ向かいました。距離は大体20メートルほどだったと思いますが、幼少期の感覚ではもっと短かったかもしれません。
私は何気なくその教室へ向かっていましたが、いつまで経っても教室に辿り着きません。端に到着したつもりが、元の遊戯室の前に戻ってしまっていました。
幼い私は少し不思議に思いつつも、また反対側へと戻りました。しかし、またしても遊戯室の前に戻ってしまいました。先ほどまで一緒に歩いていた他の園児たちもいつの間にかいなくなり、園舎内からは人の気配が消えていました。まるで私だけがこの世界に取り残されたかのようでした。
不安になった私は、再び反対側へと走り始めましたが、到着するのはいつも遊戯室の前でした。何往復したか分かりませんが、途方に暮れていたとき、少し背の高い女の子が立っていました。
見知らぬ顔でした。おそらく「第二保育園」か「第三保育園」に通っている子でしょう。彼女は泣いている私に優しく声をかけてくれました。
「どうしたの?」
泣きながらも私は教室に行けないことを伝えました。すると、彼女は私の手を取り、一緒に教室へ向かうよう促しました。
「わたしと一緒にいこう」
私たちは一緒に歩き始め、程なくして教室に到着しました。そこは先生たちがバタバタと慌ただしくしている教室でした。
私は「せんせい!」と叫び、走り出しました。それを見た先生は私を抱き上げてくれました。
「どこに行っていたの?探してたのよ!」
振り返ると、さっきまで一緒にいた女の子の姿はどこにもありませんでした。先生にその女の子のことを尋ねても、そんな子はいないと言われました。
結局、私は4時間近く行方不明だったそうです。園内から出たわけではなく、彷徨っていたのはせいぜい30分程度ですが、その間に何が起きたのかは今でも謎のままです。
その日以来、私は不思議な体験をしていませんが、今でもその日のことははっきりと覚えています。幼少の夏、少し不思議で怖い思い出です。