写真店のご主人から聞いた話ですが、現像した写真におかしなものが写り込む事は珍しくなく、そういったものは職人技で修正してお客さんへ渡すそうです。
このご主人ですが、一度だけ修正せずに渡した写真があります。
その写真は、就職活動で使う履歴書用の証明写真を撮りに、高校生のお嬢さんと母親が来店された時に撮ったものです。
写真を現像してみると、椅子に座ったお譲さんの右側に初老の紳士、左側にご婦人が、にこやかに微笑んで立っている姿が写っていたそうです。
証明写真というのは胸から上を撮るのですが、なぜかその写真は、椅子に座ったお嬢さんの全身と、その場に居るはずのない二人が写っているのです。
にこやかに微笑むその二人の表情があまりにも素敵だったせいか、証明写真用にカットしたものだけ渡せば良いのに、なぜかその写真を母親に見せてしまったそうです。
その写真を見た母親は涙を流しながら、これは娘が生まれる前に他界した両親で、
「生前は会うたびに早く孫の顔が見たいと言っていたけど、お父さんお母さんは今までもこうして見守ってくれていたのね」
と号泣し、一緒に泣くお嬢さんと母親を見てご主人もつられて泣いたそうです。
ご主人は、三人で写っている写真を職人技でさらに母親の写真も合成して引き伸ばし、額に入れて渡したそうです。