おばあちゃんに聞いた、ささやかな話。
母と二時間ドラマを見ていて、「お手伝いさんの名前って大抵○○やねえ」と言ったら、
母が「そういやママが子供のころにいたお手伝いさんの一人も○○ちゃんやったわあ」と言う。
「お手伝いさんなんていたの!?」
つい今の時代と照らし合わせて驚いてしまった。
大金持ちという訳では無いけど、戦前から田舎町の名士という感じの祖父母の家は大きく、お手伝いさんがいても不思議ではないことなのかもしれません。
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後日、祖母の家に行った時にその事を聞いてみました。
「昔はこの家に○○さんって、お手伝いさんおったんやってねえ」
「ああ、○○ちゃんって子がおってなあ…」
その○○ちゃんというお手伝いさんは、田舎村から奉公に来ていた、まだ17歳の少女だったらしい。
曾祖父母、祖父母も○○ちゃんを可愛がり、母や弟二人も懐いていて、特によく買い物に行く商店のおばさんが彼女を可愛がっていたそうです。
彼女は祖母がお誕生日にプレゼントしてあげたコートが大好きで、どこに行くにも着て行き、商店のおばさんに褒めてもらったら、「奥様に買ってもらったの」と嬉しそうに言っていたそうです。
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しかし数年後、○○ちゃんは結核にかかってしまい、田舎に帰らざるを得なくなりました。
「帰りたくない」と泣いていたそうですが、そういう訳にもいかず、祖母も「実家でゆっくり静養して、治ったらまた雇ってあげるから戻っておいで」と言い、迎えに来ていたご両親に預けました。
数ヵ月後、商店のおばちゃんが祖母に言いました。
「○○ちゃん、帰ってきたんやねえ!でも先日声かけたら無視されてん。どうしたんやろ?」
でも、○○ちゃんは帰って来ていません。
「よく似た子やないかしら?」
「でも、あんたに買ってもらったていうコート着てたよ?」
「それなら間違いないわねえ? じゃあ近くに来てたんかしら?」
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数週間後、○○ちゃんの母親から、○○ちゃんが死亡した旨の手紙が届いたそうです。
商店街のおばさんが○○ちゃんを見た日に亡くなっていたようです。
祖母は「この町に戻ってきたかったんやねえ…」と呟いていました。