俺の従兄弟の話を一つ。
非常に仲の良い従兄弟が、25歳の時に末期がんになった。
人間として凄く見応えのある人物だっただけに、身内一同とても落胆した。
従兄弟には当時付き合っていた彼女が居たが、心優しい彼は嘘を吐いて彼女に別れを告げた。
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それから1年半が経ち、抗がん剤で何とか延命していたが、いよいよ抗癌剤の効き目が無くなってきたらしく、癌は徐々に大きくなって行った。
流石に自分の余命を察したのか、それまで前向きだった彼も、毎日のように死を口にするようになった。
俺は励ますつもりで、
「癌の特効薬は、実は人間の身体の中に存在しているのかもな。
お前、今日から癌が治るよう、頭の中で呪文のように唱えろ」
などと気休め程度のことを口走ってしまった(何の根拠も無く、ただ『癌からの奇跡の復活』という本で読んだ話をしただけだった)。
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それから一ヶ月経ったある日、見舞いに行った俺に従兄弟が変な話をした。
話を聞くと、白衣を着た人間が白い大蛇に乗り、彼を治療に来る夢を一週間に一回ほど見るようになったらしい。
「あー、俺ついに、脳に転移しちゃったんだな(笑)」
なんて二人で笑った。
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だが、それを境に奇妙なことが起こり始める。
まず体力が回復してきて、食欲が出た。
そして、癌細胞が増殖を停止したどころか、縮小し始めたのだ。
「ひょっとしたら、切れるかもしれない」
前回、姑息手術で終わっただけに、その医者の言葉は信じられなかった。
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その手術の前日、夢の中にあの医者がやって来た。
彼は、
「今日が最後の治療になる」
と言ったそうだ。従兄弟は思わず、
「あなたは何者か?」
尋ねたら、
「お前が作り出した者だ」
と答えたという。
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手術は成功した。と言うか、癌細胞は殆ど消えていたそうだ。
驚くべきは、術後の医者の言葉だった。
「どこかで治療しました?」
「何でですか?」
「だって、私の記録に無い治療を行われた痕があったような…。記憶違いかもしれないけど」
驚いた。と言うか、マジぞわーっとした。
医者の話によれば、極稀に末期がんからの復活をする人がいるらしい。
俺はあの医者だと思ったが、現実世界ではこんな話をしても通用しないと思い、心の中に閉まっておくこととした。
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奇跡はこれで終わらなかった。
完全回復した彼は、突然別れた彼女に対してお詫びをしようと、何年かぶりに彼女に連絡をした。
それから数年後、彼らは結婚した。
新郎側は涙、涙だった。