俺の実家の近所に『指切り地蔵様』と呼ばれている地蔵がある。
指の部分がちょうど指切りできるように変に曲がっているから『指切り地蔵様』。
小さな頃、その地蔵様と指切りをしたことがある。近所の婆様方には止められていたけどね。どうしてもやりたかったんだ。
でも指切りした後、何も起こらなかったから『何だ、つまんね』と思い、そのまま帰った。
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そんなこともすっかり忘れた頃、右手の小指に小さな切り傷ができた。
まあその頃はやんちゃなガキだったし、またどこかで切ったのだろうと思って放置していた。
そしたら次の日も小指に切り傷ができていた。それから毎日一つずつ、切り傷は増えて行った。
ついには小指だけが切り傷だらけになって、どうしたものかと思った。不思議と痛みはなかったんだよね。
そこでふと指切り地蔵様のことを思い出した。あ、指切りしたのは右手の小指だったな、と。
急いで指切り地蔵様の所へ行ってみた。
そしたらね、指切り地蔵様の前にある台(よくお供え物などが置いてある)の上にタバコが数本落ちていた。
そこで解ったよ。指切り地蔵様は助けを求めてたんだなって。このタバコが邪魔だからどけてくれって。
どうやら俺はあの時『指切り地蔵様を守る』と約束してしまったらしい。
それから指切り地蔵様に何かあるたびに、俺の小指に切り傷ができるようになった。
もうかなり前の話で、俺も実家を離れてしまっていて今まで忘れていたのだけど、最近久々に切り傷ができたのでハッと思い出した。
ちなみに先週実家に帰って見てみると、顔にクモの巣が張っていたので取って来た。
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俺は今大学生だが、就職してお金を稼いだら、あの指切り地蔵様の所に小さな祠でも建てようと思う。
ずっと雨風に晒しっ放しなんだ。
毎回呼び出されても面倒だしな。それに約束も最後まで守り通したいし。
今度また掃除でもしに実家に戻る。