私が15歳の一月。
受験を目の前にして、深夜から朝まで受験勉強をしていた時、机の上に置いてあった参考書が触っていないのに急に落ちた。
溜息を吐いてそれを拾いに机の下に潜った時、それが起こった。
1995年1月17日5時47分。
私の住んでいた地方は戦後最大の地震に襲われた。
物凄い地響きと、色々な物が壊れる音を机の下で聞いていた。
暫くして揺れが収まり、机から這い出すと、机の向かいにあった窓ガラスが椅子の背もたれに刺さり、机の上はガラスと倒れてきた本棚でぐちゃぐちゃだった。
私は拾った参考書を見て、驚いた。
参考書だと思っていた本は、祖父母に前日買ってもらったばかりの日記帳だった。
鍵付きで革張りの、ちょっと高価なものがクラスで流行っていて、私も例に漏れず欲しくなり買ってもらったものだった。
『あれ?』と思って中を開くと、最初のページに、
『生きていることをただ感謝し、毎日を大事にせよ』
と、僧侶だった祖父の達筆な言葉が書かれていた。
はっと我に返った時、母が血相を変えて私の部屋に来た。
机の下で丸まっている私を見て、無事な姿に大泣きしていた。
※
その2時間後。祖父母が地震で亡くなったと、叔父からやっと連絡があった。
ところが、亡くなっていたのは布団の上ではなく、二人とも本堂の仏さまの前だったと言う。
後から聞いた話では、祖父母は受験前の私のために、毎日朝5時半頃から仏様に読経をしてくださっていたのだ。
あの日記帳を落としてくれたのは、祖父母だったのではないかと思えてなりません。
※
そのことがあって、私は受験高校を変更。現在は看護婦をしている。
生きていることを感謝し、毎日を大事にしたい。
日記という名の手紙を毎日日記帳に綴り、祖父母に供えて手を合わせています。今年で8冊目。