結婚してすぐ夫の転勤で北海道へ引っ越した。
知り合いも居らず、気持ちが沈んだ状態でいたある日のこと。
何となく友達の言っていた話を思い出し、それを反芻しながら道を歩いていた。
その話とは、
「この世の中には神様が七人居て、人間のふりして普通に生活してるんだって」
という妙な話。
『本当に居るのかな~、居る訳ないよな~』などと思いつつ歩いていると、前方から小学校低学年くらいの女の子が歩いて来た。
そしていきなり、
「ただいま~」
と大きな声で挨拶してきた。
もちろん全然知らない子なのだけど、あまりに元気に挨拶されたし、誰かに明るく声をかけられるのも久しぶりだったから、
「おかえりなさい」
と返事をした。
そしたら、その子がニコニコ笑いながらじっと顔を見つめてきたので、
「何?」と言ったら、
「私、そうだよ!」と言ってきた。
「何が?」と聞き返したら、
「私、そうなの。じゃあね~!」
と走って行ってしまった。
何のことだろうと思って暫く考えた後、ハッとした。
『もしかしてあの子、神様だったのかな~。今度会ったら聞いてみよう!』と本気で思った。
本当に神様だったのか、何だったのか判らないけど、ここの生活もまんざらでもないなと思い始める切っ掛けになった。
4年後にまた転勤で東京に引っ越す頃には、住んでいた街のことが名残惜しく感じるほどになっていたけど、あの子にはそれ以来一度も会えなかった。